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2026年8月4日、国土交通省関東地方整備局において、**「第3回 新湾岸道路有識者委員会」**が開催されました。

今回の委員会では、

  • 第2回コミュニケーション活動で寄せられた意見
  • 千葉市で開催された市民ワークショップ
  • 新湾岸道路の複数案
  • 各案を比較するための評価項目
  • 複数案の比較評価案

などについて審議されました。

新湾岸道路の検討は、これまでの「複数案と評価項目を設定する段階」から、いよいよ各案を具体的な数値で比較する段階へ移ります。

今回の資料で特に注目されるのは、従来の案に加えて新たな**「案3」**が示され、各案について交通渋滞、事故、防災、物流、環境、事業期間、事業費などの比較結果が公表されたことです。

この記事では、第3回有識者委員会の資料をもとに、新湾岸道路の4つのルート・構造案と、それぞれの特徴を整理します。

※本記事に記載する比較結果や事業費は、2026年8月4日時点の「案」です。今後の意見聴取や検討によって変更される可能性があります。

新湾岸道路の検討はどこまで進んでいるのか?

新湾岸道路は、高谷JCT周辺から千葉市、蘇我、市原方面にかけての湾岸地域を対象に検討されている道路計画です。

現在は、構想段階のうち、

  1. 計画検討の発議とプロセスの明確化
  2. 課題の共有と道路計画の必要性の確認
  3. 複数案の設定と評価項目の設定
  4. 複数案の比較評価
  5. 概略計画案の選定と対応方針の決定

という手順で検討が進められています。

今回の第3回有識者委員会では、STEP3の複数案・評価項目を整理し、STEP4「複数案の比較評価」へ移行することが確認されました。

ただし、現時点では採用するルートや構造が決定したわけではありません。

市民・企業から約9,400件の回答

2025年7月31日から10月5日に実施された第2回コミュニケーション活動では、複数案や評価項目について広く意見が募集されました。

寄せられた回答は、

  • 市民アンケート・オープンハウス等:9,023件
  • 企業等アンケート:375件

となっています。

このうち、自由記述による意見があったものは、

  • 市民等:5,373件
  • 企業等:173件

でした。

また、2026年5月には千葉市主催の市民ワークショップが計6回開催され、1回目に58人、2回目に48人が参加しました。

ワークショップでは、

  • 新湾岸道路に期待すること
  • 懸念していること
  • ルートや構造
  • 評価する際に重視すべき項目
  • 計画の進め方

などについて意見交換が行われました。

これらの意見を踏まえ、交通渋滞だけでなく、歩行者・自転車の利便性、地域の競争力、地盤沈下・地下水、負担の公平性、工事中の影響なども評価項目に加えられています。

比較対象となる3つのルート・4つの構造案

今回の比較対象は、ルートとしては「案1」「案2」「案3」の3案です。

案1については、高架を主体とする案と、地下構造を取り入れる案に分かれるため、実際には4つのルート・構造案を比較します。

「第3回 新湾岸道路有識者委員会」の資料より
「第3回 新湾岸道路有識者委員会」の資料より

案1-1:湾岸部を通る道路を全線新設・高架主体

沿線市の市街地や三番瀬、谷津干潟などを避け、既存の公共用地を活用しながら、湾岸部に自動車専用道路を新設する案です。

概ね全線を高架構造とし、4~6車線が想定されています。

概算事業費:約1兆円

案1-2:湾岸部を通る道路を全線新設・高架+地下主体

ルートは案1-1と基本的に同じですが、住居系地域を通る区間では、地下または半地下構造を採用します。

景観、騒音、住環境への影響を抑えられる可能性がある一方、地下構造物の建設に伴う費用や工期、地下水への影響などが課題になります。

概算事業費:約2兆円

案2:国道357号・国道16号の拡幅+一部新設

国道357号と国道16号を拡幅し、走行性の高い一般道路へ作り直す案です。

養老川付近から市原IC周辺については、一部道路を新設します。

平面構造を主体とし、主要交差点は立体化、4~6車線が想定されています。

概算事業費:約0.5兆円

案3:湾岸部と国道部を組み合わせた新設案

湾岸部に道路を新設した後、習志野周辺で湾岸部から国道357号・国道16号側へ最短経路で移行し、その後は国道と並行する道路を新設する案です。

湾岸部と市街地の双方へのアクセス性に配慮した、自動車専用道路を全線新設する案で、概ね高架構造が想定されています。

概算事業費:約1兆円


第2回コミュニケーション活動では案1-1、案1-2、案2が示されていましたが、今回の比較評価には、新たに案3が加えられました。

4つの案を整理すると

主な内容構造概算事業費
案1-1湾岸部に自動車専用道路を全線新設高架主体約1兆円
案1-2湾岸部に自動車専用道路を全線新設高架・地下主体約2兆円
案2国道357号・16号を拡幅し、一部を新設平面主体約0.5兆円
案3湾岸部と国道部を組み合わせて全線新設高架主体約1兆円

事業費は類似事業を参考に算出された段階であり、現在も精査中とされています。

交通渋滞への効果はどう違うのか?

新設道路や拡幅道路を整備した場合の2040年の将来交通量を用いて、既存幹線道路の交通容量に対する「混雑度」が試算されています。

比較案断面交通の混雑度
整備しない場合1.0~1.2
案10.7~0.9
案20.8~1.1
案30.7~0.9

混雑度が1.0を超えると、交通量が交通容量を上回る状態となります。

案1と案3では、高規格道路を新設することによって交通が分散し、案2よりも広い範囲で渋滞改善が見込まれています。

高速道路や国道へ接続するアクセス道路について、交通量の負担が軽減すると試算された路線数は、

  • 案1:45路線
  • 案2:29路線
  • 案3:44路線

となりました。

案2は国道357号・国道16号自体の交通容量を増やせますが、交通が国道側に集中するため、周辺アクセス道路の改善は限定的になると評価されています。

交通事故・災害時のルートは?

一般道路における年間事故件数の試算は、次のようになっています。

比較案一般道路の事故件数
整備しない場合約1,600件
案1約1,300件
案2約1,600件
案3約1,200件

案1と案3では、通過交通が新しい高規格道路へ転換することにより、一般道路の事故減少が見込まれています。

一方、案2では新しい高規格道路が形成されないため、事故件数は整備しない場合と同程度と試算されています。

事故や災害時に市川市から市原市まで移動できるルートの選択肢は、

  • 案1:2ルート増加
  • 案2:変化なし
  • 案3:1ルート増加

です。

高潮発生後、広域防災拠点から被災地まで道路を通行可能にするために必要な「道路啓開延長」は、

  • 整備しない場合:約13km
  • 案1:約5km
  • 案2:約13km
  • 案3:約6km

と試算されています。

防災面でも、高規格道路を新設する案1と案3の効果が大きく表れています。

物流・産業・港湾への効果

幕張新都心から60分以内に到達できる範囲の増加は、

  • 案1:約88平方キロメートル
  • 案2:約3平方キロメートル
  • 案3:約76平方キロメートル

となっています。

また、千葉港から30分以内に到達できる範囲は、

  • 案1:約230平方キロメートル増加
  • 案2:約5平方キロメートル増加
  • 案3:約43平方キロメートル増加

と試算されました。

千葉港から30分圏内に入る事業所数の増加は、

  • 案1:約2万7,000か所
  • 案2:約1,000か所
  • 案3:約7,000か所

です。

特に千葉港や京葉臨海工業地帯へのアクセスでは、湾岸部を全線新設する案1の効果が大きくなっています。

用地取得と工事期間は?

公共用地を活用することにより、用地取得を回避できる可能性がある区間の割合は、

  • 案1:約7割
  • 案2:約2割
  • 案3:約4割

です。

意外に思われるかもしれませんが、既存道路を拡幅する案2は、沿線の市街地を通過するため、全線にわたって用地取得が必要になる可能性があります。

国道357号・国道16号には共同溝などの地下占用物件もあるため、移設や調整に長期間を要する可能性も指摘されています。

さらに、現在1日3万~6万台が通行する道路を工事することから、現道の切り回しや工事中の渋滞が発生し、事業が長期化するおそれがあります。

案1は既存の公共用地を活用しやすい一方、高架構造では海上施工や海運・漁業との調整が必要になります。

地下構造を取り入れる案1-2では、地下占用物件、地下水、地盤沈下、施工期間などが課題になります。

資料から読み取れる各案の特徴

ここからは、今回示された比較評価をもとにした私の整理です。

案1は効果が最も広いが、環境と費用が課題

案1は、

  • 渋滞改善
  • 事故減少
  • 災害時の代替ルート
  • 千葉港へのアクセス
  • 物流・産業拠点へのアクセス
  • 用地取得リスク

など、多くの項目で高い効果が示されています。

一方で、湾岸部を通るため、三番瀬、谷津干潟、養老川周辺の自然環境、海辺の景観、騒音、住環境などへの配慮が必要です。

高架主体の案1-1であれば事業費は約1兆円ですが、地下構造を多く取り入れる案1-2では約2兆円となります。

案2は最も安いが、整備効果は限定的

案2は、事業費が約0.5兆円と最も安い案です。

市街地から国道へアクセスしやすいという利点がありますが、

  • 新しい高規格道路が形成されない
  • 災害時の代替ルートが増えない
  • 周辺アクセス道路の改善が限定的
  • 事故件数の減少が見込まれにくい
  • 用地取得や地下占用物件の調整が多い
  • 工事中の渋滞が長期化する可能性がある

といった課題があります。

「既存道路の拡幅だから早くて簡単」とは、必ずしもいえないようです。

案3は案1と案2の中間的な選択肢

案3は、湾岸部の新設道路と国道部に並行する新設道路を組み合わせる案です。

事業費は約1兆円で、混雑度、事故件数、アクセス道路の改善などは案1に近い数値となっています。

一方、千葉港へのアクセス効果は案1より小さく、用地取得を回避できる区間も約4割にとどまります。

交通効果と事業費のバランスを取った案

といえますが、湾岸部と国道部の両方に道路を整備するため、それぞれの地域に対する影響を慎重に確認する必要があります。

今後、第3回コミュニケーション活動を実施

2026年8月以降、複数案の比較評価について、第3回コミュニケーション活動が実施される予定です。

資料では、

  • 特設ホームページ
  • 新聞、ラジオ、テレビ
  • X、YouTube
  • ニューズレター
  • 約28か所でのオープンハウス・パネル展
  • 個人・企業向けアンケート
  • 関係者ヒアリング
  • 必要に応じたワークショップ

などを通じて、意見を募集するとされています。

広報チラシは、沿線6市と江戸川区の一部へ約96万部をポスティングし、約39万部を新聞折込みする計画です。

その後、第4回有識者委員会で市民意見や詳細ニーズを確認し、比較評価を確定する予定です。

さらに第5回有識者委員会では、概略計画案を選定する際の考え方や付帯事項などが確認されます。

「第3回 新湾岸道路有識者委員会」の資料より

まとめ

今回の第3回新湾岸道路有識者委員会では、新湾岸道路の検討が大きく前進しました。

重要なポイントは、次のとおりです。

  • 新たに案3を含む3ルート・4構造案が比較対象となった
  • 概算事業費は約0.5兆~2兆円
  • 交通・防災・物流面では案1の効果が最も広い
  • 案2は最も安いが、交通効果や代替ルート確保は限定的
  • 案3は案1に近い交通効果と約1兆円の事業費を両立
  • 自然環境、景観、住環境、用地取得、工事期間の比較も重要
  • 現時点では採用案は決定していない
  • 今後、市民や企業から改めて意見を募集する

今回の比較を見る限り、すべての項目で他案より優れている案はありません。

最終的には、

渋滞・防災・物流への効果をどこまで重視するのか
事業費、工期、自然環境、住環境への影響をどう評価するのか

という優先順位によって、選ばれる案が変わることになります。

第3回コミュニケーション活動で寄せられる意見と、次回以降の有識者委員会の議論に注目したいと思います。


最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。

参照元(一次情報)