国土交通省の社会資本整備審議会道路分科会「本州・九州連携小委員会」は、2026年10月8日に第7回会合を開催し、「本州・九州間の道路ネットワークの整備・運用に関する基本方針(案)」を取りまとめました。
今回の基本方針案では、山口県下関市と福岡県北九州市を結ぶ「下関北九州道路」について、整備費用の負担方法や通行料金のあり方、民間資金の活用、既存道路との一体的な運用など、事業実現に向けた基本的な考え方が示されています。
下関北九州道路とは?
下関北九州道路は、山口県下関市彦島迫町から福岡県北九州市小倉北区西港町までを結ぶ、延長約8km、完成4車線の自動車専用道路として計画されています。
関門海峡を横断する部分には長大吊橋が建設される見込みで、実現すれば国内では明石海峡大橋に次ぐ支間長を持つ大規模な吊橋となります。

現在、本州と九州を結ぶ道路ルートは、1973年に開通した関門橋と、1958年に開通した関門トンネルの2つです。
下関北九州道路は、これらに続く「第3の関門ルート」として位置づけられています。
計画は2025年12月23日に都市計画決定されており、今回の基本方針案によって、事業化に向けた検討をさらに進めることになります。
既存の関門橋・関門トンネルには老朽化などの課題
関門橋と関門トンネルの合計交通量は、1日あたり約64,000台に上ります。
このうち関門橋が約6割、関門トンネルが約4割を担っています。
関門橋は長距離交通、関門トンネルは山口県と福岡県を行き来する近距離交通を中心に利用されていますが、両施設とも老朽化が進み、維持管理の負担が増大しています。
特に関門トンネルでは、1日約4,800トンもの湧水への対応が必要となっているほか、関門橋でも大規模な補修工事が実施されています。
また、関門橋と関門トンネルは比較的近接した位置にあるため、災害や事故によって両ルートが同時に影響を受けるリスクもあります。
下関北九州道路が新たに整備されれば、交通の分散による渋滞緩和や、災害時における代替ルートの確保が期待されます。
整備費用は当初試算から大幅増加の見込み
下関北九州道路の概算事業費は、2020年度時点で約2,900億~3,500億円と試算されています。
しかし、近年の物価上昇や建設資材価格の高騰などにより、実際の事業費は当初の試算から大幅に増加することが見込まれています。
今回の基本方針案では、整備費用について、原則として道路利用者による負担を基本とする考え方が示されました。

その一方で、適正な料金水準を設定しても利用者負担だけでは整備費用を賄えない場合には、税金による負担も検討する必要があるとしています。
また、本州四国連絡橋の整備事例を踏まえ、地元自治体にも一定の負担を求めることが許容されるとの考え方が示されました。
今後は、具体的な事業費の精査とともに、国・地方自治体・利用者の費用負担をどのように組み合わせるかが重要な検討課題となります。
新道路は有料道路として運用、3ルートの料金調整も検討
今回の基本方針案で注目されるのが、通行料金に関する考え方です。
下関北九州道路については、整備費用の負担と交通の適切な分散を図る観点から、有料道路として運用する必要があるとしています。
さらに、下関北九州道路、関門橋、関門トンネルの3ルートについて、利用者が適切に経路を選択できるよう、料金水準を検討する方針が示されました。
具体的には、交通需要に応じて一定時間ごとに通行料金を変動させる仕組みも検討課題とされています。
これは、料金設定によって利用ルートを分散させ、道路ネットワーク全体の効率的な運用を目指すものです。
また、下関北九州道路が接続する北九州都市高速道路についても、必要に応じて現在の均一料金制や車種区分の見直しを検討することが望ましいとされました。
ただし、現時点では下関北九州道路の具体的な通行料金や料金体系が決定したわけではありません。
民間資金の活用や新技術の導入も検討
事業の実現に向けては、PPP/PFIと呼ばれる官民連携手法の導入可能性も検討されます。
これは、民間企業の資金や技術、ノウハウを活用することで、整備コストの縮減や効率的な維持管理・運営を目指すものです。
一方、長大吊橋の建設には、地盤や断層、風況などの不確定要素が多く、事業リスクも大きくなります。
このため、基本方針案では、詳細な現地調査を早急に実施するとともに、官民の適切なリスク分担について検討する必要があるとしています。
また、完成後の架け替えが困難なことから、少なくとも100年以上の耐用年数を目指した設計・維持管理を行う方針です。
道路機能に加え、電力・通信・水道などのインフラを併設する可能性についても、今後検討することとしています。
今後は詳細調査と事業化に向けた検討が本格化
今回の基本方針案では、下関北九州道路の実現に向けて、詳細調査やPPP/PFI導入可能性調査、事業手法・事業主体の確定などを進める必要があるとしています。
また、下関北九州道路単体の整備だけでなく、山口県側で将来的に中国自動車道や山陽自動車道、山陰自動車道などとの接続を図り、高規格道路ネットワークを形成することの重要性も指摘されました。
基本方針案では、本事業を国全体の道路ネットワーク強化につながる重要なプロジェクトと位置づけ、国が主体的に事業全体を牽引する必要があるとしています。
なお、具体的な着工時期や開通予定時期、最終的な事業費、通行料金などは決定していません。
本州と九州を結ぶ新たな大動脈として期待される下関北九州道路。今後の詳細調査や事業化に向けた動向が注目されます。

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