ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。
今回は、「下関北九州道路」についてご紹介したいと思います。
2026年9月10日、国土交通省の社会資本整備審議会 道路分科会 国土幹線道路部会において、「第6回 本州・九州連携小委員会」が開催されました。
今回の会議では、2026年7月に発生した熊本地震における道路の被害と対応について報告されたほか、これまでのヒアリングなどを踏まえ、本州と九州を結ぶ道路ネットワークを今後どのように整備・運用していくのかについて、「論点整理(案)」が示されました。
特に注目したいのが、
下関北九州道路を有料道路として運用する方向性
と、
関門橋・関門トンネル・下関北九州道路の3ルートを、料金によって適切に使い分ける考え方
です。
なお、今回示されたものはあくまでも「論点整理(案)」であり、料金や事業方式などが正式決定したものではありません。
「下関北九州道路」とは?
現在、本州と九州を道路で行き来する場合、主なルートは、
関門橋(関門自動車道)
と
関門トンネル(国道2号)
です。
一方で、関門橋は築53年、関門トンネルは築68年となっており、両ルートとも平常時・災害時を問わず通行止めが発生することがあります。
また、2つのルートが関門海峡の東側の比較的近い場所に集中していることから、災害時の代替性という点でも課題があります。
そこで、本州と九州を結ぶ「第3のルート」として計画されているのが、下関市と北九州市を結ぶ「下関北九州道路」です。
今回の論点整理では、下関北九州道路について、関門橋が通行止めになった際の代替路だけではなく、平常時にも中国自動車道や九州縦貫自動車道などと一体となって広域交通を担う、高規格道路としての役割が想定されています。
下関北九州道路は「有料道路」となる方向?
今回、ETCに関連する部分で最も注目したいのが料金制度です。
論点整理では、
- 交通の適切な分散を図る観点からも、有料道路として運用することが必要ではないか
とされています。
また、下関北九州道路は海峡部に長大吊橋を建設する大規模事業となるため、多額の事業費が見込まれています。
そのため、整備費については利用者負担を基本としながら、適正な料金を設定しても利用料金だけでは不足する部分については、道路整備による地域全体への効果を踏まえて、税による負担も検討する考え方が示されています。
つまり、
- 「完全な税金による無料道路」ではなく、有料道路事業を活用しながら整備する方向
が有力になってきたと考えられます。
「いくらにするか」が大きなポイントに
ただし、有料道路にすればよいという単純な話ではありません。料金が高すぎれば、せっかく新しい道路を建設しても利用されません。
今回の資料でも、
- 接続する道路を含めて3ルートの料金水準が適切なものとなるよう設定する必要がある
とされています。
ここでいう3ルートとは、
- 下関北九州道路
- 関門橋
- 関門トンネル
です。
つまり、3つの道路をそれぞれ独立して考えるのではなく、関門海峡全体の交通をどう振り分けるかという観点から料金を設定することが検討されています。
これは今後の高速道路料金制度を考える上でも、非常に興味深い考え方だと思います。
料金によって「走る道路」を変える?
委員からの意見では、さらに踏み込んだ案も出ています。
例えば、
- 老朽化が進んでいる道路の料金を高くして、新しい道路へ大型車を誘導する
という考え方です。
大型車がどの道路を利用するかによって、橋梁などにかかる負荷も変わります。
そのため、単純に最も安い料金を設定するのではなく、
- 料金を使って交通量をコントロールし、既存道路の老朽化を抑えながら3ルートへ交通を分散させる
という考え方が示されています。
道路料金が単なる「利用料金」ではなく、交通をコントロールする手段として利用される可能性があります。
「同一発着・同一料金」という考え方も
料金については、かなり具体的な意見も出ています。
例えば、現在、
- 下関IC~八幡IC:九州自動車道経由 1,270円
という料金に対して、
下関北九州道路が完成した場合には、
- 下関北九州道路+北九州都市高速道路を利用するルートについても、それに近い料金とする
という「同一発着・同一料金」の考え方が示されています。
出発地と目的地が同じなのに、利用する道路によって料金が大きく違えば、利用者は当然安いルートへ集中します。
そのため、
- どのルートを通っても料金差を小さくし、交通状況などによって適切なルートを選択してもらう
という考え方です。
首都圏などではすでに似た考え方が導入されていますが、下関・北九州エリアでも、道路ネットワーク全体を対象とした料金設定が重要になりそうです。
交通量に応じて料金を変える案も
さらに興味深いのが、
- 交通需要に応じて一定時間ごとに料金を変動させる
という考え方です。
資料では、ICT技術の進歩・普及を踏まえ、
- 一定時間ごとに変動する機動的な料金
についても検討する必要があるとされています。
例えば、
- 関門橋が混雑している場合は下関北九州道路を安くする
- 逆に下関北九州道路へ交通が集中している場合は別ルートへ誘導する
といった料金設定が将来的には可能になるかもしれません。
ETCによって車両や通行経路を把握できるようになったことで、道路料金をより柔軟に設定する環境が整ってきたともいえます。
北九州都市高速も「対距離料金」になる?
もう一つ注目したいのが、北九州都市高速道路です。
現在の北九州都市高速道路は、NEXCOの高速道路とは車種区分や料金体系が異なっています。
今回の議論では、
- ETCの普及によって対距離料金への移行が可能になっている
ことから、従来の均一料金のままでよいのか検討する必要がある、との意見も示されています。
また、車種区分の拡大や対距離料金制への移行によって、短距離利用と長距離利用の両方に対応することも検討課題とされています。
下関北九州道路が完成すれば、
- NEXCO西日本
- 福岡北九州高速道路公社
- 下関北九州道路
をまたいで走行するケースが増えることになります。
そのため、それぞれ異なる料金体系をそのまま残すのではなく、ネットワーク全体として分かりやすく、交通を適切に分散できる料金体系にする必要がありそうです。
熊本地震でも「複数ルート」の重要性が
今回の会議では、2026年7月28日に発生した熊本地震についても報告されています。
地震発生直後には九州自動車道など約142kmで規制が行われましたが、その後復旧が進み、8月14日には九州道全線で一般車両の通行が確保されました。
九州道が通行止めとなっている間には、東九州道が広域迂回ルートとして機能しました。
国土交通省とNEXCO西日本は東九州道への迂回を呼びかけ、8月7日~16日には料金調整も実施しています。
結果として、迂回によって東九州道の交通量は増えたものの、お盆期間中でも渋滞は発生しなかったとされています。
今回の熊本地震は、
- 複数の道路を確保し、料金や情報提供によって交通を分散させることの重要性
をあらためて示した事例といえそうです。
60トン級の大型車にも対応?
物流関係では、大型・重量車への対応も議論されています。
現在、関門橋には原則44トン、関門トンネルには35トンの重量制限があります。
そのため、制限を超える大型車両についてはフェリーを利用する必要があり、輸送時間やコストが増加するという課題があります。
全日本トラック協会からは、下関北九州道路について、
- 総重量60トン級のトレーラーが通行できる構造
を求める意見も出されています。
論点整理でも、重量物輸送やダブル連結トラックの利用を見据え、道路の設計荷重などを検討する必要があるとされています。
物流事業者にとっても、かなり大きな意味を持つ道路になりそうです。
「200年橋梁」を目指す考え方も
下関北九州道路は海峡を横断する長大吊橋となることから、完成後の維持管理についても議論されています。
本州四国連絡高速道路では「200年橋梁への挑戦」を掲げ、2100年までの長期保全計画を策定しています。
今回の資料では、下関北九州道路についても完成後の架け替えが容易ではないため、
- 少なくとも100年以上の耐用年数を目指す
必要があるとの考え方が示されています。
建設費だけではなく、100年以上にわたる維持管理費を含めて道路を設計していくという考え方です。
今回は「論点整理」――次は基本方針へ
これまで本州・九州連携小委員会では、福岡県、北九州市、山口県、下関市、日本バス協会、全日本トラック協会、NEXCO西日本、福岡北九州高速道路公社などからヒアリングを行ってきました。
今回の第6回委員会では、それらを踏まえて11の論点に整理しています。
今後は、この論点整理をもとに、
「基本方針のとりまとめ」
へ進み、その後、国土幹線道路部会へ報告する予定となっています。
つまり、下関北九州道路については、
「必要かどうか」を議論する段階から、「どのような料金・事業方式で、どのように運営するか」を具体的に検討する段階へ移ってきた
と考えてよさそうです。

まとめ
今回の資料で特に注目したいのは、下関北九州道路を単独の新しい橋として考えるのではなく、
- 関門橋+関門トンネル+下関北九州道路
という「3ルート」を一つの道路ネットワークとして運用しようとしている点です。
その中では、
- 有料道路としての整備
- 3ルートを考慮した料金設定
- 同一発着・同一料金
- 交通量に応じた機動的な料金
- 北九州都市高速の料金体系見直し
- NEXCO西日本などとの一体的な管理
といった、ETCとも密接に関係する論点が数多く出てきました。
特に、資料の中で「ETC普及により対距離料金への移行は可能」と明記されている点は、今後の道路料金制度を考えるうえで非常に興味深いところです。
下関北九州道路の完成はまだ先になりますが、事業方式や料金体系については、今後さらに具体的な議論が進んでいくものと思われます。
新たな情報が公表されましたら、またご紹介したいと思います。
最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。

