ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。
2026年7月31日、首都高速道路株式会社は、
**「道路運送事業(中型車以上)における価格転嫁に向けた環境整備に伴う当面の特別措置案」**に関する意見募集の結果を公表しました。
意見募集は、2026年7月9日から7月24日まで実施されました。
意見募集ページには3,117件のアクセスがあり、61人から意見が提出されています。1人が複数の意見を提出したケースもあるため、意見の総数は127件でした。
内訳は、
- 特別措置に関する意見:85件
- その他の意見:42件
となっています。
今回の結果で特に注目されるのは、中型車以上の料金改定を延期すること自体には一定の評価があった一方、大口・多頻度割引を後年度に縮小することには強い反対意見が寄せられた点です。
今回は、公表された意見募集結果から、物流事業者や協同組合に関係するポイントを整理します。
まず、今回の「特別措置」とは?
首都高速道路では、2026年10月1日から通行料金が改定されます。
ただし、道路運送事業における価格転嫁のための準備期間を確保する目的で、中型車・大型車・特大車については、2027年6月30日まで現行料金に据え置かれます。
一方、この据え置きに必要な財源を確保するため、中型車以上については、2030年7月から2031年3月まで、大口・多頻度割引の拡充分を縮小する措置が予定されています。
具体的には、中型車以上の最大割引率が、
最大45%
↓
最大25%
へ縮小されます。
つまり、今回の特別措置は、
- 当面の料金値上げを延期する
- その費用を、後年度の割引縮小によって確保する
という仕組みです。
意見募集では61人から127件の意見
今回の意見募集の実施状況は、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 意見募集期間 | 2026年7月9日~7月24日 |
| 意見募集ページへのアクセス | 3,117件 |
| 意見提出者 | 61人 |
| 特別措置に関する意見 | 85件 |
| その他の意見 | 42件 |
| 意見総数 | 127件 |
意見数が提出者数を上回っているのは、1人が複数の論点について意見を提出したケースがあるためです。
したがって、以下で紹介する件数は「人数」ではなく、論点別に整理された意見の件数である点に注意が必要です。
最も多かったのは「大口・多頻度割引を縮小すべきではない」
特別措置に関する意見のうち、最も多かったのは、
大口・多頻度割引の割引率拡充の縮小はするべきではない
という意見で、21件ありました。
そのほかにも、
- 割引縮小の影響をより小さくするべき:4件
- 料金据え置きと割引縮小では影響を受ける利用者が同じではない:4件
- 料金据え置きと割引縮小の算定根拠を示すべき:3件
- 価格転嫁の環境が整えば割引縮小を見直すべき:2件
という意見が提出されています。
これらを合計すると、少なくとも34件が、後年度の大口・多頻度割引縮小に対して、反対または再検討を求める内容でした。
「料金据え置きは評価する」という意見も多い
一方で、中型車以上の料金改定を延期することについては、一定の評価が示されています。
主な意見は次のとおりです。
| 意見 | 件数 |
|---|---|
| 中型車以上の料金改定時期の延期を評価する | 20件 |
| 特別措置の実施を評価する | 6件 |
| 後年度の割引縮小を評価する | 7件 |
特に、「中型車以上の料金改定時期の延期を評価する」が20件ありました。
物流事業者にとって、首都高速道路料金の値上げは直接的なコスト増加になります。
価格転嫁には、荷主との交渉、運賃改定、契約内容の変更など一定の時間が必要です。そのため、2027年6月末まで現行料金が維持されること自体は、前向きに受け止められていると考えられます。
延期期間をもっと長くすべきとの意見も9件
料金改定の延期を評価しつつも、
中型車以上の料金改定時期の延期期間を、さらに長くするべき
という意見も9件ありました。
首都高速道路株式会社は、今回の延期期間について、貨物自動車運送事業法に基づく措置などにより、荷主への価格転嫁の環境整備が進むと想定される時期まで、料金を据え置くものと説明しています。
また、提出された意見は、関係機関にも共有するとしています。
ただし、意見募集結果を見る限り、延期期間を延長する方向での制度変更は示されていません。
2026年10月の料金改定にあわせ、当初案どおり特別措置を実施する準備を進める方針です。
首都高はなぜ割引を縮小するのか?
首都高速道路株式会社は、割引縮小の理由について、大きく二つの考え方を示しています。
1.普通車以下の利用者との公平性
中型車以上だけを一定期間、現行料金に据え置いた場合、普通車や軽自動車など、2026年10月から値上げされる利用者との間に差が生じます。
このため、他の利用者との公平性を確保する必要があると説明しています。
2.料金据え置きに必要な財源の確保
中型車以上の料金を2027年6月末まで据え置くためには、首都高速道路株式会社にとって収入減が発生します。
その財源を確保するため、後年度の一定期間に、大口・多頻度割引の拡充分を縮小します。
首都高速道路株式会社は、後年度の割引縮小によって確保される財源が、料金据え置き措置に必要な財源と同程度になると説明しています。
「据え置きの恩恵を受ける事業者」と「割引縮小の影響を受ける事業者」は同じとは限らない
今回の意見の中には、
中型車以上の料金据え置きと、大口・多頻度割引縮小の影響が同一ではない
という指摘も4件ありました。
これは非常に重要な論点です。
中型車以上の料金据え置きは、中型車・大型車・特大車を利用するすべての対象者に影響します。
一方、大口・多頻度割引の縮小は、首都高速道路を一定額以上利用し、現在高い割引率を受けている大口利用者に影響が集中します。
つまり、
- 料金据え置きの恩恵は広く分散する
- 割引縮小の負担は大口利用者に集中する
という構造になっています。
そのため、大口利用が多い運送会社や協同組合から見ると、据え置きによる一時的なメリットより、将来の割引縮小による負担の方が大きくなる可能性があります。
2031年度以降も割引拡充を続けるべきとの意見が20件
「その他の意見」では、
2031年度以降も大口・多頻度割引の拡充を継続するべき
協同組合の活動経費確保の観点から、契約単位割引を縮小・廃止するべきではない
という意見が20件ありました。
これは、特別措置に対する意見とは別に分類されていますが、今回の意見募集結果の中でも件数の多い項目です。
首都高速道路株式会社は、大口・多頻度割引について、物流などを支援する制度であるとして、現在の拡充措置を2031年3月末まで5年間延長すると回答しています。
一方で、2031年4月以降については、引き続き見直しを議論していく方針です。
首都高は「大口・多頻度割引は高すぎる」との問題意識も維持
首都高速道路株式会社の回答では、今後の大口・多頻度割引について、必ずしも維持・拡充する方向だけが示されているわけではありません。
首都高の持続可能な道路サービスに関する検討会では、大口・多頻度割引について、
- 割引後の大型車料金が、割引のない普通車料金とおおむね同額になる
- 道路構造物に与える影響に応じた公平な負担になっていない
- 割引を受けない普通車利用者にも債務返済の負担が及ぶ
- 将来世代の利用者にも負担が残る
といった問題が指摘されています。
このため、首都高速道路株式会社は、受益と負担の均衡を図る観点から、今後も見直しを議論すると回答しています。
したがって、2031年3月末まで拡充措置が延長されたからといって、その後も現在の割引率が維持されると考えるのは早計です。
契約単位割引についての回答にも注意
協同組合にとって重要なのが、契約単位割引に関する回答です。
意見の中では、協同組合の活動経費を確保する観点から、契約単位割引を縮小・廃止するべきではないという主張がありました。
これに対して首都高速道路株式会社は、
契約単位割引は、高速道路の大口・多頻度利用者に対しての利用促進を目的として実施している割引
と回答しています。
これは、首都高速道路株式会社が、契約単位割引を「協同組合の運営経費を確保する制度」として位置づけているわけではない、という意味でもあります。
協同組合側の認識と、高速道路会社側の制度目的には差があります。
今後、契約単位割引が議論される際には、協同組合の運営実態だけでなく、大口利用の促進という制度本来の目的に照らして検討される可能性があります。
「物流政策と矛盾するのではないか」という意見も
そのほか、次のような意見も提出されました。
| 意見 | 件数 |
|---|---|
| 物流事業者に負担を求める料金改定は、国の物流政策と矛盾する | 4件 |
| 割引縮小による一般道への交通転換を考慮すべき | 3件 |
| 一般道への転換でCO2排出量が増えるのではないか | 1件 |
| 料金引き上げ分は国費や地方税で負担すべき | 1件 |
| ETC専用化で人件費削減が進んでいるのではないか | 1件 |
首都高速道路株式会社は、料金改定について、労務費・材料費の高騰、災害対応などにより維持管理コストが増えているため、必要な維持管理費を利用者に公平に負担してもらう必要があると説明しています。
また、割引縮小による一般道への交通転換については、今後の交通状況を注視すると回答しています。
ETC専用化が進んでも、値上げは必要なのか?
「ETC専用化によって料金所の人件費削減が進んでいるのではないか」という意見もありました。
これに対し首都高速道路株式会社は、2028年春までに、本線料金所などの一部を除き、入口料金所のETC専用化を目指していると説明しています。
ETC専用化により、
- 料金所周辺の安全性向上
- 渋滞緩和
- 環境改善
- 料金収受コストの縮減
- 将来の柔軟な料金設定
などの効果が期待されています。
一方で、労務費や材料費の高騰、災害の激甚化などにより、道路全体の維持管理コストは増加しているため、ETC専用化だけでは増加分を吸収できないというのが首都高速道路株式会社の説明です。
意見募集によって特別措置の内容は変わったのか?
今回公表された意見募集結果を見る限り、特別措置の基本的な内容に大きな変更はありません。
首都高速道路株式会社は、
2026年10月の料金改定と併せて、特別措置を円滑に実施できるよう準備を進める
としています。
したがって、現時点では、
- 中型車以上は2027年6月末まで現行料金
- 2030年7月から2031年3月まで中型車以上の割引拡充を縮小
- 大口・多頻度割引の拡充措置は2031年3月末まで延長
という当初案の枠組みで実施される見通しです。
意見募集結果の概要
今回の意見募集結果から、主に三つのことが読み取れます。
1.料金改定の延期自体は一定の評価を得ている
価格転嫁のための時間を確保するという考え方には、一定の支持があります。
特に、中型車以上の料金改定延期を評価する意見が20件あり、運送事業者にとって準備期間が必要であることは共有されていると考えられます。
2.後年度の割引縮小には強い抵抗がある
一方、今回の意見で最も多かったのは、大口・多頻度割引を縮小すべきではないという意見でした。
短期的な料金据え置きと引き換えに、将来の割引率が低下する仕組みについて、大口利用者が強い懸念を持っていることが分かります。
3.2031年4月以降の制度見直しが本当の焦点
今回の特別措置では、2031年3月末までの対応が示されています。
しかし、首都高速道路株式会社は、大口・多頻度割引について公平性の観点から見直す必要があるとの考えを維持しています。
したがって、協同組合や物流事業者にとっては、2030年7月の割引縮小だけでなく、2031年4月以降に大口・多頻度割引制度そのものがどうなるかが、より大きな問題になります。
協同組合・運送会社が確認しておきたいこと
今回の意見募集結果を踏まえ、次の点を確認しておくことをおすすめします。
- 2027年7月以降の中型車以上の料金増加額
- 2030年7月以降の割引率縮小による影響
- 最大45%から最大25%になった場合の月間負担額
- 契約単位割引の縮小・廃止リスク
- 組合員への還元率や手数料体系への影響
- 荷主への価格転嫁の進捗状況
- 首都高速道路から一般道への経路変更の可能性
- 2031年4月以降の制度変更に備えた収益構造の見直し
今回の内容は、ETCカードの実務担当者だけでなく、理事長、役員、事務局長、運送会社の経営者にも共有しておくべき内容です。
まとめ
首都高速道路株式会社が実施した特別措置案の意見募集では、61人から合計127件の意見が寄せられました。
中型車以上の料金改定延期を評価する意見が20件あった一方、最も多かったのは、
大口・多頻度割引の割引率拡充を縮小すべきではない
という意見で、21件ありました。
また、2031年度以降も大口・多頻度割引の拡充を継続すべきとの意見も20件ありました。
しかし、意見募集を受けても特別措置の基本的な枠組みは変更されておらず、首都高速道路株式会社は当初案どおり実施する準備を進めています。
今回の特別措置は、中型車以上の料金値上げを単純に免除する制度ではありません。
短期的には料金を据え置く一方で、その財源を後年度の大口・多頻度割引縮小によって確保する仕組みです。
協同組合や運送会社では、2027年7月、2030年7月、2031年4月という複数の節目を見据えて、利用実績と負担額をあらかじめ試算しておく必要があります。
最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。

