2026年8月24日、国土交通省にて、令和8年度第1回「運行管理高度化ワーキンググループ」が開催されました。

今回のワーキンググループでは、

  • 同一事業者内での運行管理業務の一元化
  • 事業者を跨いだ運行管理業務の一元化
  • 遠隔点呼・自動点呼の活用促進
  • 次世代運行記録計(デジタコ)の制度化

など、今後の運行管理業務に大きく影響するテーマについて議論されています。

特に注目したいのが、「運行管理業務の一元化」がさらに次の段階へ進もうとしていることです。

今回は、ワーキンググループで示された内容を整理してみたいと思います。

これまで進められてきた「運行管理の高度化」

国土交通省では、ICTを活用することによって、運行管理者の負担軽減や人手不足への対応、安全性の向上などを図るため、運行管理制度の見直しを段階的に進めています。

これまで、

  • 遠隔点呼
  • 業務後自動点呼
  • 業務前自動点呼
  • 事業者間遠隔点呼
  • 同一事業者内での運行管理業務の一元化

などについて実証実験や制度化が進められてきました。

今回示されたロードマップを見ると、今後はさらに、

「1つの営業所から複数営業所を管理する仕組み」

そして、

「別の事業者の運行管理業務を行う仕組み」

へと検討が進んでいくことが分かります。

運行管理の高度化は、「点呼を遠隔・自動で行う」という段階から、運行管理そのものの体制を再構築する段階へ移りつつあるといえそうです。

同一事業者内の一元化で「運行管理者の兼任」を認める方向へ

令和6年度から、同一事業者内における「運行管理業務の一元化」が本格運用されています。

ところが、現在の制度には一つの課題があります。

例えば、X営業所とY営業所の運行管理業務をX営業所へ一元化した場合でも、運行管理者の選任については営業所単位で考える必要があります。

その結果、一元化したにもかかわらず、

必要となる運行管理者の人数が、一元化前より増えてしまう

ケースがあります。

また、運行管理者については営業所間の兼任ができないため、一元化による業務効率化の効果を十分に発揮できないという問題もありました。

そこで今回、国土交通省から新しい制度案が示されました。

基本的な考え方は、

集約営業所と被集約営業所を「一体」とみなし、運行管理者の相互兼任を認める

というものです。

さらに、営業所間の距離や移動時間などによる制限についても、原則として設けない方向が示されています。

一方、安全性を確保するため、それぞれの営業所には一元化前の車両台数に基づいた運行管理者を配置し、非常時にも対応できる体制を構築することなどが求められる方向です。

実証実験では、一元化によって業務量の平準化や負担軽減などの効果が確認され、懸念されていた運行管理者の心理的負担についても増加は見られなかったとされています。

今回のワーキンググループでは、この「1:1」の仕組みについて制度化する方向性が議論されました。

次は「1:N」へ――複数営業所の運行管理をまとめられるようになる?

さらに重要なのが、その先です。

現在検討されているのは、

  • 1つの集約営業所+1つの被集約営業所

という「1:1」の一元化ですが、国土交通省はさらに、

  • 1つの集約営業所+複数の被集約営業所

という「1:N」の一元化についても検討を始めています。

つまり将来的には、

  • A営業所からB営業所を管理する

という形だけではなく、

  • A営業所からB・C・D営業所をまとめて管理する

といった運用が可能になる可能性があります。

令和8年度には、3つ以上の営業所を一体として扱う場合について実証実験を行い、運行管理者の業務負荷や安全性、必要となる制度上の要件などを検証する方向です。

この制度が実現すれば、複数営業所を持つ運送事業者にとって、運行管理体制の組み方そのものが大きく変わる可能性があります。

さらに「事業者を跨いだ一元化」も検討

そして今回、もう一つ大きく踏み込んだのが、

  • 事業者を跨いだ運行管理業務の一元化

です。

事業者間の「遠隔点呼」については令和7年度から本格運用されていますが、今回検討されているのは点呼だけではありません。

将来的には、

  • 本来B社が行う運行管理業務の一部を、A社が実施する

という制度まで視野に入っています。

当初は「運行管理業務全体をパッケージで別事業者へ委託する」ことも想定されていました。

しかし、事業者へのヒアリングでは、運行管理業務を丸ごと委託するニーズは確認されなかった一方で、一部の業務や、自社と関係する運行については受委託の可能性があることが分かりました。

そこで今回、具体的な一元化のパターンとして次の3つが示されています。

パターン1 運送契約のある「協力会社」との一元化

元請・協力会社など、すでに運送業務上の関係がある事業者間で、一部の運行管理業務を一元化するケースです。

パターン2 「共同拠点」を活用した一元化

複数の事業者が利用している共同拠点などに、運行管理業務を集約するケースです。

パターン3 「グループ企業間」での一元化

資本関係などのあるグループ会社間で、運行管理業務を一元化するケースです。


今後、それぞれのパターンについて事業者へのヒアリングを行い、実際に制度化ニーズが確認されたものについては、令和9年度に実証実験を行う予定とされています。

事業者を跨いだ一元化が制度化されれば、これまで「会社単位・営業所単位」が基本だった運行管理の考え方が大きく変わる可能性があります。

遠隔点呼・自動点呼は「制度化」から「普及」の段階へ

一方、遠隔点呼や自動点呼については、制度そのものを検討する段階から、実際にどのように普及させるかという段階へ移ってきています。

今年度は、

  • 同一事業者内遠隔点呼
  • 事業者間遠隔点呼
  • 業務後自動点呼
  • 業務前自動点呼

について、事業者へのアンケートやヒアリングを実施します。

具体的には、

  • 実際の利用状況
  • 導入時の障壁
  • 運用上の障壁
  • 導入によるメリット
  • 運用上の工夫
  • 導入しなかった理由

などを調査します。

そのうえで、実際に有効活用している事業者の事例を集めた「優良事例集」を作成するほか、事業者から多く寄せられる質問をまとめたFAQも整備する予定です。

今後は「制度上使えるかどうか」だけでなく、実際の現場で「どう使えば効果が出るのか」という情報提供にも重点が置かれることになりそうです。

「次世代運行記録計」も制度化へ

今回のワーキンググループでは、「次世代運行記録計」についても重要な進展がありました。

現在の通信型デジタコは、安全管理や労務管理、動態管理などに活用できる一方、導入コストが普及上の課題となっています。

そこで国土交通省では、運行データをクラウドへ確実に保存することを前提として、従来のデジタコに求められていた一部の耐久性試験を緩和することで、より低コストな機器を利用できる仕組みを検討しています。

実証実験では、通信環境などの影響により、0.93~1.24%の割合でデータを速やかに送信できなかったケースがあったものの、再送信によって最終的にはすべてのデータがクラウドへ保存され、データ欠損が生じていないことが確認されました。

また、

  • 速度
  • 運行距離
  • 運行時間

という法定三要素についても、事前に定められた精度の範囲内であることが確認されています。

国土交通省のスケジュール案では、2026年内の制度化を目指すとされています。

タブレット端末などを活用した、より低コストな運行記録計が普及する可能性もあり、こちらも今後の動向に注目です。

運行管理は「営業所ごとに人を置く」仕組みから変わっていくのか?

今回の資料を通して見えてくるのは、国土交通省が個別のICT制度だけを検討しているわけではない、ということです。

遠隔点呼、自動点呼、運行管理業務の一元化、事業者間での一元化、次世代運行記録計――。

これらを組み合わせることで、

「人が営業所に常駐して運行管理を行う」という従来の仕組みそのものを、ICTを前提とした運行管理体制へ段階的に変えていく

方向性が見えてきます。

特に、

  • 「1:1」→「1:N」→「事業者を跨いだ一元化」

という流れは、今後の運送事業者の運行管理体制に大きな影響を与える可能性があります。

人手不足が続く運送業界にとって、運行管理者をどの営業所に何人配置するのかという問題は、単なる業務効率化ではなく、営業所運営や事業継続にも関わるテーマです。

今後制度化が進めば、複数営業所を持つ事業者だけでなく、グループ会社、協力会社、共同拠点などを含め、運行管理体制そのものを見直す事業者が増えてくるかもしれません。

次回の運行管理高度化ワーキンググループは、2027年2月頃が想定されています。

特に「1:N」の実証結果や事業者を跨いだ一元化の具体的な制度設計について、引き続き注目していきたいと思います。

最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。

参照元(一次情報)