ETCカードをご利用のみなさん、こんにちは!

いつもは、日本国内の高速道路に関する内容ばかりなので、今回は、海外の高速道路料金の割引事例 についてご紹介したいと思います。

海外では、どのように高速道路が整備されてきたかで大きく2つに分かれています。アメリカ、イギリス、ドイツは、主に無料で高速道路が整備されてきましたが、フランス、イタリア、スペインは、主に有料で高速道路が整備されてきました。有料で高速道路を整備してきた国では、主にコンセッション契約が利用されています。

コンセッション契約とは、政府と民間企業との間で締結される契約で、これにより民間企業はインフラの整備と運営を一定期間、自らの費用とリスクで実施し、その対価として、インフラの利用料を徴することを認めるというものです。コンセッションは、特許、免許、特権、営業権という意味があります。

上記のフランス、イタリア、スペインは、日本と同様に、道路の建設費と維持管理費を一定期間内に償還することを前提とした償還主義による有料制ですが、それとは別に、混雑緩和や環境改善といった政策目的を実現することを狙った有料制が導入されることもあります。その一つがロードプライシングです。

ロードプライシングは、インフラの資金回収だけでなく、混雑や環境等への影響も含めて、道路の利用者に課金しようとするもので、混雑状況に応じて課金額を変動させる可変料金制や、混雑した地域に進入する際に課金するエリア課金(コードン課金)などがあります。

日本の平日朝夕割引や深夜割引は可変料金制の一種であるとみなされています。

エリア課金(コードン課金)の代表例は、シンガポール、ロンドン、ストックホルムで、これらの都心に進入する車が一定額の課金をされています。

日本の高速道路料金を検討する上で、国土幹線道路部会では、海外事例も検討材料として取り上げられています。実際の資料が以下です。

国土幹線道路部会の資料から

エリア課金(コードン課金)の代表例をまとめています。

国土幹線道路部会の資料から

シンガポールは1975年からロードプライシングを導入しており、交通に与えた影響も大きかったと評価されています。ロードプライシング導入によって通勤者が自動車利用から種々の公共交通サービスに転換したことが確認され、混雑が解消したからです。

国土幹線道路部会の資料から

ロンドンのエリア課金では、カメラがナンバープレートを記録し、課金したナンバープレートと照合する方式となっていて、支払いがなかった場合の罰金制度もあります。車載器が必要ない課金制度となっており、導入が容易ではありますが、違反者の80%しか補足できないといった課題もあります。

国土幹線道路部会の資料から

ストックホルムでのコードン課金は、交通渋滞が減少し、公共交通への大幅なシフトが発生するなど大きな効果をあげました。2006年1月~7月まで試行ベースで導入されましたが、非常に好意的に受け入れられる結果となり、住民投票により恒久ベースで実施されることが決定し、2007年8月から正式導入となっています。

国土幹線道路部会の資料から

フランスでは、主に公的な団体であるSEMCA(高速道路混合経済会社)によって有料で高速道路を整備してきましたが、2005年に国家財政の立て直しを目的にSEMCAの株式は民間に売却され、民営化されました。日本の日本道路公団ならびにNEXCOに似ていますね。

国土幹線道路部会の資料から

アメリカでは、原則として道路は公営(従って、原則無料)、鉄道・バス等は民営(従って、原則有料)という枠組みの中で、交通政策が運営されてきました。しかし、都市部での渋滞による経済損失がかさみ、人口の高齢化と貧困層の増大によって自動車の購入や運転が難しい人が増加している中で、効果的・効率的な交通を確保するために、民営の鉄道・バスに政府補助を行い、無料の道路を有料化するといったことが行われるようになったという経緯があります。

州レベルでは、さまざまな州が走行距離課金の導入に向けて検討が進み、UberやLyftのようなライドシェア事業者への課税を検討する州も出ています。

国土幹線道路部会の資料から

韓国では、2007年から日本と同様なETCが導入されていますが、全車種がETCを利用できるわけではなく、乗用車、小型トラック、バスのみがETCを利用できるようになっています。大型車は不正防止を考慮して現金のみ。よってETC利用率は約50%と日本に比べると大幅に低くなっています。

独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構では、海外の高速道路事情を調査した内容を「海外調査報告書」としてまとめ、HP上に掲載しています。特に「高速道路機構海外調査シリーズ」は、諸外国の高速道路政策を知る上で非常に参考になります。ボリュームがありますが、興味がある方は一読をオススメします。

海外調査報告書 – 独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構

今回は、海外の高速道路料金の割引事例ついてご紹介しました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。