ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。

今回は、現在、国土交通省の有識者委員会である「国土幹線道路部会」にて議論されている「高速道路の更新・進化・財源」についてご紹介したいと思います。

本日、2022年3月10日に、第52回国土幹線道路部会が開催されました。議論されたのは、大きく以下の2点です。

 1.暫定2車線区間の対応
 2.高速道路の更新事業等に関する報告

暫定2車線区間を4車線化するのは、「高速道路の進化」にあたるわけですが、令和4年度については、財政投融資0.5兆円を利用して7か所、43kmを事業化するとのこと。

第52回国土幹線道路部会資料より

暫定2車線区間の4車線化は、2019年9月に優先整備区間(880km)が選定され、2020年(令和2年)から事業化されました。

2021年度までに約200kmを事業化し、2022年度は、43kmを事業化、今後は、10~15年かけて優先整備区間を事業化する方向とのこと。

第52回国土幹線道路部会資料より

おおむね方向性としては問題なしという委員の意見が大半でしたが、財源をしっかり確保できないと、10~15年で優先整備区間をすべて事業化できないのではないか?という意見や、優先整備区間の選び方については時間経過と社会情勢の変化によって再検討が必要ではないか?という意見が出されました。(継続検討事項となっています)

次が、「高速道路の更新」ですが、2012年の笹子トンネル天井板崩落事故を契機に大きな転換を迎えました

2013年6月に国土幹線道路部会は、「中間答申」として、高速道路の更新を計画的に行うこと、高速道路の利用者がそれを負担することが提言され、2014年に「高速道路の更新」の事業化が開始されました。

その後、すべての橋梁やトンネル等において5年に1度の定期点検を行った結果、想定よりも早く補強材が劣化し、耐久性が保たれない事例が発見されるなど、修繕をしても十分に性能が回復しない事例が判明し、予防保全も含めた「高速道路の更新」の必要性がクローズアップされました。

当初の計画よりも多くの「高速道路の更新」をするには当然お金が必要となり、更新事業中は交通規制など社会的影響を考慮する必要もあり、大きな議論がありました。その結果、2021年8月に国土幹線道路部会は、「中間答申」として、高速道路の維持・修繕・更新用の財源確保に向けて現行の償還制度の見直しが提言されました

下図は、左矢印が修繕・更新、右矢印が点検、検査に関する過去の流れです。

第52回国土幹線道路部会資料より

現行の償還制度は、2065年まで料金徴収をするというものですが、中間答申の提言を受け、現在、国土交通省では、料金徴収期間の延長または、永久化が議論されています

第52回国土幹線道路部会資料より

高速道路の更新は2014年度から開始され、以下の図のように、現状の進捗状況は計画の30~40%といったところです。

7年経過して進捗が30~40%、期間は15年で計画されているため間に合わないのではないか?という意見が委員から出ましたが、国土交通省では、立ち上がりに時間がかかったが、直近は年間10%程度の進捗なので問題ないという認識のようでした。

第52回国土幹線道路部会資料より

更新事業として、漏水による車線規制回数が増えている事例や塗装剥離、部材破断、ボルト破断の事例、PC床板・PC桁の劣化事例などが報告されました。

今後については、「更新」「進化」「財源」という大きく3点を具体的に検討するとのことで、そろぞれの論点について委員から意見がでました。

第52回国土幹線道路部会資料より

意見として、大きく以下の4つが出ていました。

 1.更新を正当化するロジック(理屈立て)の必要性
 2.予防保全、更新用の評価方法の策定
 3.財源確保に向けた中長期のロードマップの策定
 4.償還制度、料金制度変更に伴う国民への説明方法

印象に残ったのは、費用対効果に関する指摘です。
費用対効果とは、ある費用をかけたとき、どれだけ効果があるかということをみる指標ですが、「B by C」(ビーバイシー)とも呼ばれ、以下のように定義されています。

費用対効果 = 便益(Benefit)÷費用(Cost)

「B by C」は高速道路の「建設」では使えるが、「維持・更新」ではこの評価手法は使えないという意見が多く、予防保全、更新用の評価方法を新たに策定しなければならないとのことでした。

これは国民への説明とも関連し、なぜ高速道路の更新が必要なのか?そのためにどれくらいの費用・不便があるのか?を整理した上で提示する必要があるとのこと。

高速道路は作ることが優先され、荷重管理がなっていなかったこと、メンテナンスが杜撰だったことなども説明した上で、今後こうならないようにインフラの長寿命化のために償還制度の延長や料金の値上げなどを国民にお願いし、理解を求めていく必要があるという指摘が委員からありました。

このあたりは、継続検討ということで今後議論が深められることになるでしょう。 今回は、国土交通省の有識者委員会である「国土幹線道路部会」にて議論されている「高速道路の更新・進化・財源」についてご紹介しました。

引き続き、フォローして情報があればお知らせしたいと思います。