ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。
今回は、「本州四国連絡道路」の償還計画と料金水準についてご紹介したいと思います。
莫大な費用をかけて、本州と四国の間に3本の高速道路が造られたことはみなさまご存知だと思いますが、建設費用は、借金によって賄われておりますので、いつかは返却(償還)しなくてはなりません。その償還計画と、現在の料金水準に至った経緯などをご紹介できればと思います。
本州四国連絡道路は、1969年年5月に閣議決定された「新全国総合開発計画」により、建設が決定し、これを受け、1970年7月に「本州四国連絡橋公団(本四公団)」が設立、順次3本のルートの建設工事が実施されました。
しかし、その後、当初の工事費から約3.8倍になるなど費用が大きく膨らみ、さらに実績交通量が推定交通量を大きく下回るなど、毎年当期損失金を計上する状態が続きました。
そこで、本四公団は、償還計画を変更し、1998年度から2012年度まで国と10府県市から毎年度800億円の出資を受け、この出資金を償還に充てることになりました。
その後、道路関係四公団民営化の方針を受け、本四公団の多額の欠損金を解消するために、有利子負債のうち、約1.46兆円を国が継承し、2012年度までだった国と10府県市からの毎年度800億円の出資金の受け入れを2022年度まで10年延長した上で、2005年10月に本四公団は、本州四国連絡高速道路株式会社(本四会社)及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(機構)に承継されました。
今ではほとんど話題に上りませんが、2005年10月の道路関係四公団の民営化時においては、本四公団を承継する本四会社について、有利子債務の返済が相当程度進み、経営安定性が確認された段階で、西日本高速道路株式会社と合併することが、高速道路株式会社法に記載されています。
ところが、2010年4月に国土交通省が出資金の受け入れを2022年度までとした償還計画を前提とした本四道路の新料金案を示したことを契機として、2010年5月、10府県市が、2012年度以降の追加出資を行わないことを同省に申し入れたことから、国と10府県市との間で今後の出資について協議が行われることになりました。
その後、複数回の協議を経て、2012年2月に10府県市は、「今後の本四高速についての出資地方団体の基本的考え方」を発表しました。
この考え方は、以下のような内容でした。
・全国共通の料金水準を導入し、そこに本四高速を組み入れること
・償還期間の延長など、償還スキームの抜本的見直し
・本四高速に透明性の確保、経営改善に向けた指導を行うこと
・具体的な制度設計を2012年度末までにとりまとめること
・上記が確認できれば、2年間の追加出資を検討すること
これを受け、国土交通省は、「今後の本四高速料金の基本方針」にて、必要な措置を講じることを発表しました。
これにより協議は大きく進み、国と10府県市との間で今後の出資について合意が図られ、 2012年3月に、10府県市から「今後の本四高速についての出資地方団体の合意事項」が発表されました。
そして、本州四国連絡道路の料金についてですが、2013年6月に出された国土幹線道路部会の中間答申において「多額の建設費や海峡部横断という特別な便益を提供していることから、料金水準を他の区間より高くすることは妥当だが、有効活用の観点から大きな差とならないようにすべき」との提言を受け、2013年12月に国土交通省発表の基本方針により、「3つの料金水準の導入」がなされ、本四道路は、海峡部として、伊勢湾岸道路と同等の108.1円/kmに料金水準の整理がされることになりました。
その後、2011年度から2年延長された10府県市の追加出資が2013年度に終了し、2014年度以降は、追加出資は行われておらず、本四道路の出資金は、本四公団からの承継時は、1兆0966億余円でしたが、国と10府県市からの追加出資を受けて、2013年度末には、1兆7382億余円となり、現時点でも同額のままとなっています。
この出資金については、法律によると独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(機構)の解散までに出資積立金として積立を行う必要がありますが、他の道路と異なり「本四道路に係る出資金の返済方法については、機構の解散時までに検討する」となっており、現状では、全国路線網の債務返済計画においては、本四道路に係る出資金の額が未償還残高として残ることとなっています。
この問題について、2019年6月、参議院の決算委員会にて、会計検査院に対して検査要請が出され、2021年3月に会計検査院から結果が報告されています。
会計検査院の報告書の詳細は以下をご参照下さい。
高速道路に係る料金、債務の返済等の状況に関する会計検査の結果について
該当箇所を抜粋したものが、以下です。
本四道路に係る出資金の総額は1兆7382億余円と多額に上っており、機構が出資積立金として同額を積み立てるためには、貸付料収入や高速道路の維持修繕に要する費用等による収支差の状況に鑑みれば一定の期間が必要になり、債務返済計画に影響を与えることになる。また、本四道路は26年度から全国路線網に指定されて、本四道路に係る地域路線網のみの貸付料等ではなく全国路線網の貸付料等で本四道路に係る債務の返済等を行うことになるなど、機構解散時までに返済方法を検討することとされた15年度からは、本四道路を取り巻く状況は変化している。しかし、令和元年度末時点において、国土交通省の審議会等において本四道路に係る出資金の返済方法について検討されたことはない。
したがって、国土交通省及び機構において、本四道路に係る出資金の返済方法については、計画的に検討を行い、その結果を債務返済計画に反映する必要がある。
令和3年4月の会計検査院の報告書より
国会に提出されたこの報告書に対して、機構と国土交通省は、「自治体と調整しながら計画的な返還を検討していきたい」と回答しました。
現時点で、本四道路の出資金の返済方法は明確にはされておりません。
2021年8月に出された国土幹線道路部会の中間答申では、本四道路に限らず他の高速道路も含めて現行の償還制度の限界を指摘し、現行の償還制度の見直しが提言されています。
本州四国連絡道路の料金水準は、2014年4月に「海峡部等特別区間」として3つの料金水準に含められましたが、この料金水準の期限が2024年3月までとなっているので、2024年4月以降は料金改定がある可能性があります。
今回は、「本州四国連絡道路」の償還計画と料金水準について、ご紹介しました。 最後まで読んで頂きまして、誠にありがとうございます。