ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。

今回は、「高速道路の無料化」についてお話したいと思います。

高速道路はいつか無料になる」・・・そんな話を聞いたことがある人は多いかと思いますが、実際、無料になるのでしょうか?もしなるとすればいつ無料になるのでしょうか?

まずは、高速道路の有料化についての経緯をご紹介します。

戦後、日本は激増する交通需要に対応するために、道路特定財源有料道路制度という2つの制度で、道路整備を進めてきました。

有料道路制度は、昭和27年に制定され、事業主体は当初、国、県、市から始まりました。その後、昭和31年に特別措置法が改正され、事業主体は、日本道路公団と町村を含む地方自治体とされたほか、首都高、阪高、本四がそれぞれ設立されました。その後、高速道路会社は民営化となりました。

日本では、道路は無料公開の原則がある一方で、限られた財源の中で早期整備を図る必要があるということで、その例外として料金収入により建設費と管理費を賄う制度が成り立っています。

この料金徴収期間が満了すれば、高速道路は無料となるという枠組みです。

しかし、建設費と管理費だけでなく、高速道路は維持・補修や更新が必要となるためこの更新事業を計画に含めた上で、平成26年度(2014年度)に機構法、特措法が改正され、特定更新事業のため、償還期間は15年延長されました。

これによって、料金徴収年限が2050年から2065年へと延長されました。

次に整備状況ですが、令和2年4月時点では、上図のようになっており、無料区間は25%です。この無料の高速道路の維持管理費の負担をどのようにするかについては、議論が必要だと言われています。

なぜ議論が必要かというと、現状では、維持管理費を有料にする制度は、地方道路公社のみにしか認められておらず、期限も許可から45年を超えないものとなっているからです。

上図は、欧州各国の高速道路料金制度です。欧州ではもともと道路整備が進んでいて無料で整備が進んでいた国と、後発部隊で有料制度を活用して高速道路を整備してきた国に分かれます。いずれも料金収入は道路整備、維持管理費、更新費に充当されています。また、償還期間は、当初は30年程度でしたが、償還期間を大幅に延ばしている国がほとんどとなっています

これまでご紹介してきたことが、高速道路の有料化についての経緯と現状ですが、これを踏まえて国土幹線道路部会で高速道路の今後について議論されていますが、専門家である委員の間で高速道路が今後無料化されると考えている方はいないようです。

以下、2020年11月4日に開催された第44回国土幹線道路部会における各委員の発言ですが、どの委員も無料化が可能だとは考えていないようです。

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委員A
2065年までに償還を終えて無料開放されることになっているというわけですけれども、返済するべき借金の中に、新東名とか新名神の6車線化、あるいは有料道路の暫定2車線の4車線化、あるいはこれから必要になるであろう更新事業が含まれていません

多分これらを足したら10兆円以上になるんじゃないかと思うんですけれども、改めて償還計画を見直す必要があるというふうに思います。

ただ、その際には、償還期間を先に延ばすということではなくて、これまで提案されてきたように、永久有料の財源制度に変えていくということが必要じゃないかと思います。
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委員B
管理有料に関する議論がありますが、高速道路は永久構造物ではないので、確実に劣化するため、維持補修・更新の費用が必要になってきます。維持補修・更新時代にはいったこの段階で、きちっとした制度化に向けた議論をする段階に入ってきたと思います。
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委員C
維持更新の話ですが、高速道路というのはやはり安全性をより高度に保たなければいけないということで、管理費、維持費が高くなるというのは当然の話です。

これを踏まえると、ちょっとした亀裂とか穴ぼこでも事故につながることがあるので、そういう意味で路面性状の確認とか、そういう意味での安全確保のための費用もかかります

そこで自動運転の話が出てきていますが、前回あったと思うのですが、自動車のほうの自動運転とは別に、管理のほうで、新しい高速道路の管理の自動安全システムのようなものというのが前回あったと思うので、多分ここにも入ってくると思います。

そういうものも含めて、高速道路を取り巻く環境の変化の中に、車の自動運転と、もう一つの安全確保のためのいろいろな手法として、今までやってきた従来手法でない管理手法がどんどん出てくるということも、検討されると思いますが、こちらも必要であろうと思っています。
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委員D
ここで考える必要があるのは、改めて償還主義というものが持続可能なものなのか、償還主義というのは機動的なのか、償還主義というのは利用者重視なのかという点についてもう一度洗い出す必要があると思うんですよね。

多くの先生がおっしゃっているとおりなんですけれども、果たして永久有料と償還主義のどちらが持続可能なのかといった点について論理的に議論する必要があると思います。

利用者重視という点についても、更新のコストがかかるたびに償還期間が何回も延びて、「あと10年後には、あと50年後には無料です。しばらくたって、やっぱり更新が増えたので、次、プラスもう10年後には無料です」と、そういうことを言いつづけると、本当に利用者を重視しているのかということになってしまいます。

言葉は悪いですけれども、ずっと国民はだまされているような気がするかもしれない。ということで、本当に利用者を重視するならば、一体どういう制度がいいのかということを検討するべきではないかと思います。
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委員E
やはり人口動態と維持管理費用が反比例していくというのが目に見えていますよね。

そういう状態の中で、これまで描いてきた絵というのが、やはり大幅に早く直しておかないと、いずれ無料化しますよという絵をずっと見せられていくと、それが延び延びになっていくと、やっぱり不信感含めて将来像を描けないということになりますので、この議論に関しては早々に始めていきたい、いかなければいけないかなと思いました。
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委員F
高速道路の老朽化がどんどん進んでいて、管理費とか維持費、修繕にたくさんお金がかかるということとか、国土強靱化のためにもいろいろな対応をする必要があることとか、自動運転や新しい技術への対応も必要だから、たくさんお金が必要なので、場合によっては利用者の方にちょっと負担をお願いする場合もありますよということを、もうちょっと率直にニュアンスを含めて表現してもいいかなという感じがしました。

というのが国土幹線道路部会で発言されている内容ですので、料金徴収年限である2065年に高速道路が無料化されるというのはなかなか難しいのかなと。

ちなみに、国土交通省道路局の資料では、高速国道の維持管理水準は一般国道よりも高くなるため、管理費(維持費)も大きくなるとのこと。

まだ結論がでていない問題ではありますので、引き続き、フォローしていきたいと思います。


(追記)

料金徴収については、「2065年までの徴収期間のさらなる延長は「妥当」」という提言が2021年8月4日に公表された「中間答申」にて提言されました。
やはり無料化にはならなさそうです。

「国土幹線道路部会」にて「中間答申」がとりまとめられました – 2021/08/04


(2023.02.08 追記)

国土交通省が、高速道路の料金徴収期限を、2065年から2115年へ50年延長する方針を固め、2023年1月23日召集の通常国会に、道路整備特別措置法などの改正案を提出する予定とのこと。

中間答申では、「2065年までの徴収期限のさらなる延長は妥当」とされていましたが、具体的に「2115年までの50年延長」という方向性のようです。

「高速道路の料金徴収期限を2115年へ50年延長する」とした報道に対する国土交通大臣の回答がありました