ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。

近年、日本の物流業界にて長時間労働、厳しい取引環境、人手不足など課題が深刻化していることはニュースなどでご存じのことかと思います。

いわゆる、「物流の2024年問題」です。

また物流業界では、2024年度からのトラックドライバーへの時間外労働の上限規制等の働き方改革や脱炭素化に向けた取組への対応も求められております。

そのような状況の中、荷主企業や消費者も一緒になり、それぞれの立場で担うべき役割を再考し、物流が直面している諸課題の解決に向けた取組を進め、持続可能な物流の実現につなげるために、

国土交通省、経済産業省、農林水産省にて「持続可能な物流の実現に向けた検討会」が2022年9月に設置されました。

検討会は、2022年9月2日から月1回程度のペースで開催され、

2023年2月8日に「中間取りまとめ」が発表されました。

  ・2022年09月02日 – 第1回検討会
  ・2022年10月06日 – 第2回検討会
  ・2022年11月11日 – 第3回検討会
  ・2022年12月13日 – 第4回検討会
  ・2023年01月17日 – 第5回検討会
  ・2023年02月08日 – 中間取りまとめ
  ・2023年02月17日 – 第6回検討会
  ・2023年03月01日 – 第7回検討会
  ・2023年03月30日 – 第8回検討会

2023年3月30日には第8回目の検討会が開催され、

2023年5月~6月に「最終取りまとめ」を行う予定となっています。

今回は、2023年2月8日に出された「中間取りまとめ」の内容についてご紹介できればと思います。

持続可能な物流の実現に向けた検討会の資料より

現状と課題

(1)物流の危機的状況に対する荷主企業や消費者の理解の醸成が不十分

2024 年問題の荷主企業の認知度は産業全体で5割程度であり、また物流が危機的な状況に陥りつつあることを見聞きしたことがある消費者も5割程度となっている。これは、行政による荷主企業や消費者の意識醸成の取組が十分でないことや、商取引において物流コストを明示しない慣習である店着価格制や商品販売において購入額が一定以上の場合等に送料を無料とするサービスが存在し、荷主企業や消費者において、物流の状況について理解する機会が限られていることが要因であると考えられる。

荷主企業においては、物流部門においては物流課題に対する危機意識があったとしても、経営者層を含む企業全体としての認識につながっていない。また、納品リードタイム延長等の物流負荷軽減に資する取組が荷主企業の社会的評価につながっておらず、物流生産性向上に向けたインセンティブが働きにくい状況となっている。

また、消費者に対しては、SDGsやカーボンニュートラルといった社会課題の解決からも再配達削減等の取組が求められることを行政が発信していくことが求められる。

(2)物流プロセスの課題(非効率な商習慣・構造是正、取引の適正化、着荷主の協力の重要性)

貨物輸送の前提となる貨物の内容や納品時期等については、発荷主と着荷主との間で決定されるため、物流事業者が独自に貨物輸送の効率化を図ろうとしても実施困難な場合が多い。また、発荷主企業先や着荷主企業先でトラックドライバーが荷役作業を行う場合に対価が収受できていないだけでなく、附帯作業として商品棚への陳列作業まで行う場合もあるなど、トラックドライバーにとって非効率な商慣習が広まっている。加えて、契約が書面等で締結されておらず、契約内容が曖昧なままトラックドライバーが附帯作業を行うことによって適正な運賃・料金が収受できていないなど、物流事業者と荷主企業間の取引の適正化や非効率な商慣習の是正が必要である。

トラックドライバーの生産性向上と担い手確保により持続可能な物流を実現するためには、荷主企業も含めたサプライチェーン全体で生産性向上に取り組むことが必要である。特に、サプライチェーン全体の最適化にあたっては、物流需要の起点である着荷主企業の協力が非常に重要である。

発荷主企業と着荷主企業が協働して非効率な商慣習の是正に取り組むことや、契約条件の明確化等による取引の適正化、物流事業者の取引関係における多重下請構造の是正等の取組が必要である。

(3)物流標準化・効率化・省力化・省エネ化・脱炭素化における課題

トラックの積載率は4割未満となっており、共同輸配送の帰り荷の確保等による積載率の向上を図る取組が必要である。

また、標準化が進んでいないことにより、様々な規格のパレット等が存在している。物流 DX を推進して効率化を図るためには、その前提として、物流を構成するソフト・ハードの各種要素の標準化が極めて重要である。物流に関わる全てのステークホルダーが、各種要素の非統一に起因して発生する物流現場の負担を明確に認識し、その改善に向けて協力して取り組むことが必要である。

加えて、物流業界においては働き方改革の推進が急務である中、中継輸送やモーダルシフトの導入等、労働時間削減や担い手不足解消のための取組を進める必要がある。

さらに、運輸部門は我が国全体の CO2 排出量の2割を占め、そのうち4割は貨物自動車からの排出であるなど、脱炭素化を進めるにあたって重要な大口需要家である。トラック輸送の効率化や車両の EV 化、再エネ施設導入等、脱炭素化に向けた取組が不可欠である。

課題を踏まえた政策の方向性

(1)荷主企業や消費者の意識改革

物流の危機的状況に対する荷主企業や消費者の理解を深め、危機感を共有し、意識改革を進めるため、次の施策を検討すべきである。

  ① 物流に係る広報の推進の検討
  ② 物流改善の取組が評価されるような仕組みの検討
  ③ 経営者層の意識改革を促す措置の検討
  ④ 消費者に求められる役割の検討

(2)物流プロセスの解決

ガイドライン等についてインセンティブ等を打ち出して有効に機能するようにするとともに、類似の法令等を参考に、規制的措置等、より実効性のある措置も検討すべき。

その検討にあたっては、物流事業者が提供価値に応じた適正対価を収受するとともに、物流事業者、荷主企業・消費者、経済社会の「三方良し」を目指すものとし、最終とりまとめに向け、KPI を含めたイメージを示すこととする。

  ① 待機時間、荷役時間等の労働時間削減に資する措置及び
    納品回数の減少、リードタイムの延長等物流の平準化を図る措置の検討
  ② 契約条件の明確化、多重下請構造の是正等の
    運賃の適正収受に資する措置の検討
  ③ 物流コスト可視化の検討
  ④ 貨物自動車運送事業法に基づく荷主への働きかけ等及び
    標準的な運賃に係る延長等所要の対応の検討
  ⑤ トラックドライバーの賃金水準向上に向けた環境整備の検討

(3)物流標準化・効率化の推進に向けた環境整備

物流生産性向上や労働環境改善を通じた担い手確保、モーダルシフト等を進めるため、次の取組を通じ、物流標準化・効率化(省力化・省エネ化・脱炭素化)の推進に向けた環境整備を進めるべき。その際には、民間投資を促しながら、強力に推進するための方策についても検討すべき。

  ① デジタル技術を活用した共同輸配送・帰り荷確保等の検討
  ② 物流の平準化を図るための措置の検討
  ③ 官民連携による物流標準化の推進の検討
  ④ 物流拠点ネットワークの形成等に対する支援の検討
  ⑤ モーダルシフトの推進のための環境整備の検討
  ⑥ 車両・施設等の省エネ化・脱炭素化の推進に向けた環境整備の検討
  ⑦ その他生産性向上を図るための措置の検討

今後の検討の進め方

(1)検討の進め方

今後の検討に当たっては、中間取りまとめを元に、事務局において講ずべき措置や施策の具体化を進める。この際、企業規模や輸送物資の特性等により、物流実務は大きく異なっているため、荷主業界団体等へのヒアリングを通じ、業種ごとの特性等、実態をよく踏まえた施策とすることが重要である。業界団体・有識者等へのヒアリングを通じて措置・施策をより精緻化していく。

他方、2024 年4月のトラックドライバーの時間外労働の上限規制適用まで、1年余りしか残されていない。そのため、講ずべき措置や施策については、可能な限り前倒しして実施するとともに、制度整備など時間を要するものについては、制度施行以前から実効的な取組が進むよう検討していく必要がある。

(2)検討スケジュール(予定)

  2023年2月~4月 業界団体等へのヒアリング
  2023年5月~6月 最終取りまとめ

というスケジュールを予定しているとのことで、実際に第6回検討会からは業界団体へのヒアリングが始まっており、全国物流ネットワーク協会、日本化学工業協会、日本製紙連合会、日本建材・住宅設備産業協会、全国農業協同組合連合会、全国中央市場青果卸売協会、日本加工食品卸協会、日本スーパーマーケット協会など多くの業界団体へのヒアリングを実施しています。


物流の2024年問題に関しては、2023年3月27日の参議院予算委員会の中で岸田首相から「近日中に、新たな関係閣僚会議を設置・開催し、緊急に取り組む施策をとりまとめる」旨の発言があり、

2023年3月31日に「我が国の物流の革新に関する閣僚会議」の初会合を開く予定とのこと。

我が国の物流の革新に関する閣僚会議」は、岸田首相や所管省庁の閣僚が出席し、物流を巡る現状と諸課題について議論するとのこと。有効かつ緊急の施策が発表されることを期待しています。

試算によれば、トラックドライバーの長時間労働を抑制する際、労働時間削減のために具体的な対応を行わなかった場合には、輸送能力の14.2%が不足し、ドライバー数の減少を加味すると、2030年度には輸送能力の34.1%が不足すると見込まれており、これを改善する取り組みを進めていくことが急務となっています。

課題を早急に改善・解決する施策が発表されることを期待しています。

最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。


(追記)「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」について、2023年3月31日の斉藤鉄夫国土交通大臣の定例記者会見にて質疑応答がありましたので、ご紹介したいと思います。

(大臣)物流の革新に関する閣僚会議について

トラックドライバーに対して、時間外労働の上限規制が適用されるまで、明日でちょうど1年となります。
現在、物流業界は、上限規制の適用により、一人当たりの労働時間が短くなることから、何も対策を講じなければ物流が停滞しかねないという、いわゆる「2024年問題」に直面しています。
このため、我が国の社会経済の変化に迅速に対応し、荷主、事業者、一般消費者が協力して我が国の物流を支えるべく、政府一丸となって検討を行うため、本日、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」が開催されました。
本日の会議において、総理からは、6月上旬を目途に、緊急に取り組むべき対策を「政策パッケージ」として取りまとめるよう、御指示があったところです。
国土交通省としては、関係省庁と緊密に連携し、スピード感をもって、「2024年問題」に対応してまいりたいと決意しています。

(記者)

今御紹介のありました物流に関する関係閣僚会議で、改めて今後どのようなスケジュール感でどういった具体策を講じていくのかお聞かせください。

(大臣)

本日の会議において、総理からは、1年以内に具体的な成果が得られるよう、対策の効果を定量化しつつ、6月上旬を目途に、緊急に取り組むべき抜本的・総合的な対策を「政策パッケージ」として取りまとめるよう御指示がありました。

具体的には、物流の生産性向上を図るため、

 1つとして、荷主・物流事業者間等の商慣行の見直し
 2つめに、物流の標準化やDX・GX等による効率化の推進
 3つめに、荷主企業や消費者の行動変容を促す仕組みの導入

これらを進めるべく、これらの抜本的・総合的な対策について、対策の効果を定量化しつつ、検討を進めていきます。国土交通省としては、物流を停滞させないよう、関係省庁と緊密に連携し、スピード感をもって、「2024年問題」に対応していかなければならないと思っています。


岸田総理からは、2023年6月上旬を目途に「政策パッケージ」を取りまとめるように指示があったとのことで、実質的には、2023年5月から6月に最終取りまとめを予定している「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の提言から政策がまとめられるだろうと予想しています。

注目ですね。