ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。

物流の2024年問題」と呼ばれ、日本の物流業界にて長時間労働、厳しい取引環境、人手不足など課題が深刻化していることはニュースなどでご存じのことかと思います。

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以前、ご紹介しましたように「物流の2024年問題」に対応するために、国土交通省、経済産業省、農林水産省にて「持続可能な物流の実現に向けた検討会」が2022年9月に設置されました。

【物流の2024年問題】国土交通省・経済産業省・農林水産省による「持続可能な物流の実現に向けた検討会」について

2023年4月27日に「第9回 持続可能な物流の実現に向けた検討会」が開催され、業界団体からのヒアリンクを元にした調査結果が公表されました。そこには、トラック運送事業者に対する新規措置案として、

 ・下請運送事業者リスト作成 の義務化
 ・契約内容の書面化の義務化

が記載されていました。

「第9回 持続可能な物流の実現に向けた検討会」資料より

トラック運送についての実態把握調査とは?

トラック業界における多重下請構造の是正や契約条件の明確化を図るため、多重下請の現状や契約と実際の業務内容の関係を調査するため、

 ①トラック事業者向けアンケート
 ②荷主、実運送事業者、利用運送事業者ヒアリング

を実施したようで、①トラック事業者向けアンケートは、全日本トラック協会を通じて、会員企業の4401社から回答があり、②荷主、実運送事業者、利用運送事業者ヒアリングは、14事業者へヒアリングを実施したとのこと。

下請の利用状況は?

  • 7割の事業者が、下請のトラック事業者を利用していると回答し、下請金額は受託金額のおおむね90%以上で委託している。
  • 下請のトラック事業者を利用する理由として、「自社のトラックドライバーが不足」、「荷主からの突発的な運送依頼」という回答が多い。

下請事業者の受注状況は?

  • 「他のトラック事業者からの依頼を受けるケースがあるか」という問では、「ある」と回答した事業者が8割を占める。
  • 「ある」と回答した事業者のうち、約半数の事業者が更に他の事業者へ委託している。

下請構造は?

  • 中小零細事業者ほど3次請け以上となっている割合が多くなる傾向(資本金1,000万円以下で約15%)。
  • 事業者数ベースで見ると、より多くの事業者が3次請け以上になっている可能性。

契約の書面化の状況は?

  • 契約の書面化の観点では、真荷主との契約、トラック事業者同士の契約の両方で、ほとんどの契約が書面化されているという回答。
  • しかしながら、書面化されている内容として、運送日時や運賃・料金は書面化されている割合が高いものの、附帯業務料金や燃料サーチャージについては、書面化されていない割合が高い。
  • トラック事業者間の契約では、資本金が少ないほど書面化されていないと回答する事業者が多い

附帯業務の状況は?

  • 約半数の事業者が、契約書に記載のない附帯業務があったと回答。
  • さらに、フォークリフトでの荷役が多く行われている状況。

ヒアリング結果は?

<多重下請について>

  • 下請は、あるとしても基本的に3次下請までというのが肌感覚。(実運送事業者)
  • 下請が連なると、細かい作業指示が通らなくなり、トラブルが発生することがある。(荷主事業者)
  • 荷主の視点では、輸送の品質を鑑みて、どの事業者が運んでいるのかという点は把握しておきたい。(荷主事業者)
  • 積載率を高めるため、帰り荷の確保に努めようとすると、実運送をしない利用運送事業者に委託することになり、そこで必然的に下請構造が発生することになる。(利用運送事業者)
  • 実運送まで100%把握するように努めているが、実運送をしない利用運送事業者に依頼すると、それ以降の把握が難しい。(利用運送事業者)
  • 一つの運行には、主たる下請事業者の他、単発の庸車もあるので、それらも把握するとなると作業コストが高い。(実運送事業者)
  • 実運送事業者の情報については、事業者やトラックの情報だけでなく、荷待ち時間等も報告してもらい、荷主との価格交渉等に活用している。(実運送事業者)

<契約内容の書面化について>

  • 単発の案件が主体で、書面での契約はしていないが、発注書と請書を取り交わし、元請事業者には、再委託先の事業者の情報を共有している。(利用運送事業者)
  • 定期的な運送契約については書面されている。一方突発的な単発の案件について都度書面化することは難しい。(実運送事業者)
  • 基本的な事項を定めた契約書はあるが、個々の依頼についてはFAXやメール。(実運送事業者)
  • 納品時間等の運行に関する指示はFAXでやり取りすることが多い。(実運送事業者)
  • 以前作成した契約書をずっと使っている場合が多い。附帯作業についての記載がないものもあり、運賃交渉でも附帯作業分をもらえないことがある。(実運送事業者)
  • 単発の案件では契約書を作成していない。(実運運送事業者)

トラック運送事業者に対する措置

調査結果をふまえ、事務局から「多重下請」対策と「契約内容の書面化」対策として2点の「トラック運送事業者に対する措置案」がだされていました。

  • 多重下請構造が、実運送事業者の適正な運賃・料金の収受を妨げていると考えられることから、取引環境を改善するためには、運送体制の可視化が必要。また、荷主が運送体制を把握していないことで、運送契約の責任の所在が不明確になる可能性がある。
  • 建設業法を参考に、元請運送事業者に対し、「運送体制台帳(下請運送事業者リスト)」の作成を義務付けること等が考えられる。
「第9回 持続可能な物流の実現に向けた検討会」資料より
  • 事業者同士の契約については、書面化がなされている一方、附帯業務やその料金、燃料サーチャージについては書面化されていない場合が多く、適正な運賃・料金の収受が困難。
  • 内航海運業法を参考に、契約内容を書面で交付することを義務付けることが考えられる。
「第9回 持続可能な物流の実現に向けた検討会」資料より

検討会では、2023年5月~6月に「最終取りまとめ」を行うスケジュールが建てられております。また、岸田首長を議長とする「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」が2023年3月31日に開催され、6月上旬を目途に、緊急に取り組むべき対策を「政策パッケージ」として取りまとめるよう、各担当大臣に指示がだされていることから、あと1ヶ月ほどで検討会から政策提言がまとめられるだろうと思われます。

「第9回 持続可能な物流の実現に向けた検討会」資料より

最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。

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