ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。
近年、日本の物流業界にて長時間労働、厳しい取引環境、人手不足など課題が深刻化していることはニュースなどでご存じのことかと思います。
いわゆる、「物流の2024年問題」です。
残業時間規制及び拘束時間規制による物流への影響が懸念されています。特に長距離輸送においては、これまでと同じ運行方法では改善基準告示違反となる場合があります。
この問題に対処するために政府は、2023年6月2日に「物流革新に向けた政策パッケージ」を決定しました。今回は、具体的な施策としての「中継輸送の拠点整備」の課題と今後の取り組みについてご紹介したいと思います。
中継輸送 とは?
「中継輸送」とは、ドライバーの拘束時間短縮を目的として、1つの輸送行程を複数のドライバーで分担して貨物を輸送する輸送形態です。
具体例を出すと、大阪から東京まで片道約600kmを1人のドライバーが1泊2日で運行するのではなく、名古屋などに中継拠点を設け、大阪から名古屋、名古屋から東京をそれぞれ別のドライバーが担当することで、ドライバーから見ると、片道約300kmの日帰り運行を可能にする輸送形態です。
現在、中継輸送実証実験がいくつかの場所で行なわれ、すでに事業化されている拠点もあります。
1つ目が、関東と関西の間に位置する静岡県・浜松です。新東名の浜松SAに隣接する中継物流拠点を整備し、2018年から事業が開始されています。
2つ目が、関西と九州の間に位置する広島県・宮島です。宮島SAにて2022年に実証実験を実施し、2023年から事業が開始されています。
3つ目が、札幌と稚内の間に位置する北海道の道の駅(もち米の里なよろ)です。2021年、2022年と2回実証実験が行われています。
2つ目でご紹介した宮島SAで実施された2022年に実証実験では、ドライバーから「拘束時間が減少される」「日帰り可能なため、車中泊の負担が軽減される」等の声がよせられ、「コネクトパーキング宮島」として本格的な中継拠点としての整備がされることになりました。
3つ目でご紹介した北海道の道の駅での実証実験では、「中継輸送と共同輸送の組み合わせ」で、空荷削減と積載率向上を図るパターンが試行されました。
実証実験の結果は、いずれの輸送パターンでも、トラックドライバーの労働時間削減等の効果が確認され、荷物のマッチングを行う予約システムのニーズや将来的な中継輸送のニーズがあることも確認されました。
今後は、荷物のマッチングを行う予約システムの改善や、札幌・北見、札幌・函館などの中継拠点の配置を検討するとのこと。
1日の拘束時間は、原則13時間以内であることを踏まえると、1日の走行可能距離は、約560km(片道約280km)となり、片道300km以上は日帰り運行ができなくなるので、現在、片道300~600kmの範囲に中継拠点を整備することが適していると考えられます。
今後の中継拠点として考えられる300km以上の輸送距離の流動量上位20位が以下の通りです。
500km以上の輸送距離の流動量上位20位が以下の通りです。
首都圏ー愛知ー関西圏ー福岡間の流動量が多いのは当然ですが、新潟ー関西圏や愛媛ー愛知間もかなりの流動量があることがわかります。
課題と今後の取組について
中間拠点整備の促進における課題は、大きく2つ上げられています。
1.自社拠点が整備できない中小事業者も含めた中継拠点の整備
2.中間拠点に求められる機能の検証や地域での官民連携
労働環境の改善やドライバーを確保する観点からも、日帰りが可能となる中継輸送の普及促進は必要なので、既存の道路ストックを活用した実証実験や拠点整備の検討が今後進められると思われます。
今後の中継拠点整備の検討ですが、まずは、中継拠点の整備ニーズが高いエリアを抽出し、その後、必要機能の検討や官民が参画する検討体制の構築を行った後に、実証実験を行う。そして、実験結果を踏まえた中継拠点の整備・確保を行うという流れが想定されています。
今回は、「物流の2024年問題」 の具体的な施策としての「中継輸送の拠点整備」の課題と今後の取り組みについてご紹介しました。
いくつか課題はありますが「中継輸送の拠点整備」は、ドライバーの拘束時間削減への効果がかなり大きいので、整備が進むことを期待しています。
最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。