ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。
今回は、国土交通省が運送事業者による遠隔点呼や自動点呼など、運行管理業務の高度化に向けた検討を行っていることについてご紹介したいと思います。
運送事業者は、現在、輸送の安全確保のため、営業所毎に運行管理者を配置し、運転者に対する乗務前後の点呼や運行中に必要な指示等の運行管理を「原則対面で」行っています。
しかしながら、人手不足解消や労働環境の改善のために、運行管理に情報通信技術の活用が注目されています。
2023年4月以降、「遠隔点呼告示」と呼ばれる「対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示」(令和5年国土交通省告示第266号)の要件を満たしたうえで営業所を管轄する運輸支局へ届出を行うことにより、同一事業者間(完全子会社含む)であれば一の営業所から他の営業所の運転者に対して遠隔点呼を行うことが可能となっておりますが、
そこをさらに、
同一事業者間のみならず事業者を跨ぎ(100%の資本関係にないもしくは資本関係のない事業者間)遠隔点呼を行うこと
を可能にしようと検討を進めているようです。
また、現在は「業務後点呼における点呼自動化」が可能となっておりますが、
将来的には「業務前、業務後の点呼における完全点呼自動化」を目標に検討が進められています。
そのような状況の中、国土交通省は、資本関係にない事業者間における遠隔点呼や業務前自動点呼の実証実験、運行管理業務の一元化の制度化に向けた要件のとりまとめを行うために「有識者会議」を設置しています。
それが、「運行管理高度化ワーキンググループ」です。
前回は、2023年12月6日に「令和5年度 第2回 運行管理高度化ワーキンググループ」が開催されており、今回は、約1年ぶりの開催となります。
この有識者会議では、運行管理高度化の内容や検討スケジュールなどについて議論を行っています。以下、検討内容の概要です。
検討内容としては大きく以下の3つとなっています。
- 遠隔点呼
- 自動点呼
- 運行管理業務の一元化
検討スケージュール案は以下の通りです。
そんな「運行管理高度化ワーキンググループ」ですが、2024年11月6日に令和6年度 第1回「運行管理高度化ワーキンググループ」が開催されました。
そこでは、「事業者間遠隔点呼」や「業務前自動点呼」の実証実験について議論を行うとともに、運行管理業務の一元化の制度化に向けた要件の検討を行われました。
1.事業者間遠隔点呼
「事業者間遠隔点呼の先行実施要領」を出した上で、実証の位置づけで希望する業者を募り、運行管理高度化WGにてその実施可否を決定し、令和5年度分の先行実施を行っており、令和6年度分は事業者を現在募集中となっています。
令和7年度からは要件を固めた上で、本格運用を開始したい
とのこと。
現在行われている先行実施の進め方は以下のようになっています。
特に「個人情報の取り扱い」に注意が払われている内容となっています。
また、実施要領として、
ドライバーのアルコールや体温、血圧が設定値を超えていた場合は遠隔点呼を中断または中止し、ドライバーの所属元の運行管理者へ連絡し、運行の可否に係る指示を仰ぐことが明記
されています。
それ以外には、
月に1回はドライバーと所属元の運行管理者は対面で健康状態の把握や指導監督を適切に行うことも明記
されています。
現在でも同社の営業所間、または100%子会社の営業所の間で遠隔点呼をすることは可能ですが、今回は資本関係がないまたは100%未満の事業者間での遠隔点呼に対する要件の検討となっており、乗務可否の判断の考え方は以下のようになっています。
2024年9月末時点で、事業者間遠隔点呼は7801回実施され、現在のところ大きなトラブルは報告されておらず、特に業務前の点呼で事業者間遠隔点呼が多く活用されているとのこと。
現在実施している令和5年度申込事業者は、事業者が希望する場合、最大で2025年3月末まで先行実施の期間延長が認められる予定となっています。
ただし、現行の要件に加えて、さらなる検討を行う項目あり、機器の故障時の対応や不正の防止、知識不足への対応、乗務不可の場合の運行停止措置、事故対応などより詳細に要件を整備する必要があります。
今後の予定としては、
令和6年度先行実施申込事業者へのヒアリングを追加し、要件のさらなる検討を行った上で、2024年12月に実施予定の第2回運行管理高度化ワーキンググループで要件の中間とりまとめを提示する
とのこと。
2.業務前自動点呼
今回のワーキンググループは、先行実施結果を受けた上で、業務前自動点呼の要件を検討することを目的としています。
検討スケジュールは以下となっています。
令和6年度中に要件を検討し、令和7年度から本格運用を目指す
とのこと。
乗務不可となった事案や健康状態の悪化により運行の中断に至ったケースなど、当時の状況の詳細(運転者の自己申告やバイタルデータなど)について個人が特定されない形で国土交通省に報告を求める運用がされていますが、令和5年度の実証実験では、そのようなケースがなかったとのこと。
現在、業務「後」自動点呼は可能ですが、今回は業務「前」自動点呼の要件の検討となっており、先行実施での乗務可否の考え方は以下のようになっています。
2024年10月末時点で、先行実施へ35の事業者から申請を受けており、先行実施要領に示した要件に対し、先行実施を実施する事業者より、データ・情報を得て分析・考察を行い、制度化に向けた検討を進めるとのこと。
今後については、
従前の対面点呼と同等の安全性が確保できるのかについて、実証数を増やして確認し、制度化に向けた要件について詳細な検討を実施するとともに業務前自動点呼の効果について確認する
とのこと。
3.運行管理業務の一元化
現在、安全性を確保した上で遠隔から点呼や運行指示を実施するための個々の制度や機器の要件等について、先行実施を通じて、制度化に向けた検討を進めており、これら個々の制度を組み合わせることにより、ICT機器を活用した運行管理業務の一元化の実現をすることを目指しています。
同一事業者間における運行管理業務の一元化は、2024年4月より本格運用が開始されていますが、2024年9月末時点での届け出は24件にとどまっています。
運行管理業務を一元化し、効率化することで、運行管理者の業務負荷低減を狙っているが、本制度の活用で全体の運行管理者の選任数が増えてしまうという問題が届出数が少ない原因と考えられます。
この課題に対しては、
運行管理をDXの活用により1つの営業所の集約する場合、被集約営業所に残る運行管理業務を整理し、被集約営業所の運行管理者の選任数についての考え方を改めて検討し、運送業界の人手不足に寄与する制度としていく
とのこと。
国土交通省は、運行管理業務における「自動点呼」「遠隔点呼」「運行管理業務の一元化」の3つについてICTの活用により高度化を目指す方針とのことで、
本ワーキンググループの第2回を2024年12月に、第3回を2025年3月に開催し、すべての運行管理業務のDX化を2025年4月から本格運用させる予定のようです。
最後まで読んで頂き、誠にありがとうございました。