ETCカードをご利用のみなさま、こんにちは。

今回は、2023年2月16日に、高速道路の料金・割引に関する検討を行う有識者会議である「第53回国土幹線道路部会」が開催されましたので、内容をご紹介したいと思います。

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前回の「第52回国土幹線道路部会」が開催されたのが、2022年3月10日でしたので、約1年ぶりの開催となりました。まずはその1年間の対応や動きについて、国土交通省道路局から以下の報告がありました。

  1.大雪に伴う高速道路の対応について
  2.高速道路料金に関する最近の動きについて
  3.高速道路の更新の取り組み等について
  4.高速道路の進化の取り組み等について
  5.道路整備特別措置法の改正について

1.大雪に伴う高速道路の対応について

2023年1月24日の大雪に伴う新名神の大規模渋滞について、2023年2月8日にNEXCO中日本、西日本から検証した結果が発表されました。

国土幹線道路部会の資料より

国土交通省からNEXCO中日本・西日本に対して、原因調査と対応策について報告を指示した結果、通行止めのタイミングが遅れたことや滞留に巻き込まれたすべてのドライバーへ支援できなかったこと、渋滞解消に長時間を要したことなどを踏まえ、「事実→原因→対応策」という形で報告されました。

国土幹線道路部会の資料より

委員からは、「大雪の時に割引を止める」など利用者が使わないような仕組みを考えるべきだという意見がありました。

2.高速道路料金に関する最近の動きについて

こちらは、2021年8月に出された「中間答申」を踏まえた料金割引の見直しについて報告されました。

速やかに実現するべき料金制度のあり方で中間答申で記載された割引のうち、報告されたのは、「大口・多頻度割引」を除く以下の4つの割引です。

  ・平日朝夕割引
  ・深夜割引
  ・休日割引
  ・マイレージ割引

協同組合や運送会社が一番気になる「大口・多頻度割引」に関しては、今回は言及がありませんでした。

国土幹線道路部会の資料より

平日朝夕割引」については、すでにNEXCOから発表があったように2023年4月から北陸道の一部で「フリータイム通勤パス割引」を試行実施し、効果や課題を検証の上、今後全国に拡大していくとのこと。

【平日朝夕割引の見直し】2023年4月から北陸道の一部で「フリータイム通勤パス割引」が開始されます!

国土幹線道路部会の資料より

深夜割引」については、こちらは、国土交通省からすでに発表されていますが、深夜割引の適用時間帯を拡大した上で、適用時間帯を走行した分のみ深夜割引を適用する方針で、長距離利用の軽減措置も盛り込まれる予定となっています。こちらは、2024年度中を目途に実施予定とのこと。

【深夜割引】国交省が割引内容の見直しポイントを発表

国土幹線道路部会の資料より

なぜ2024年度中とかなり実施が先になるのか?については、適用時間帯を走行した分のみ深夜割引を適用するためには、高速道路の各地に「ETCフリーフローアンテナ」を準備する必要があり、これに時間がかかるとのことでした。

ETCフリーフローアンテナ」は停止や減速を行うことなく、アンテナ下を通過することによりETC車載器と通信を行うことができる設備です。

ETCフリーフローアンテナの例
ETCフリーフローアンテナの例

休日割引」については、GW・お盆・年末年始などの繁忙期を適用外とした上で、観光周遊割引の平日拡充をすでに行い、利用が約2倍に増加するなど実績がでているとのこと。

観光を意識した上で、曜日を問わないという説明がありました。

国土幹線道路部会の資料より

マイレージ割引」については、「中間答申」においては、利用者が割引を受けていることを実感できる制度への見直しについて検討すべきとされていますが、割引制度そのものを変更するのではなく、WEBサイトの見やすさの向上、ポイント残高のメール通知機能の実装等を順次実施しているとのこと。

国土幹線道路部会の資料より

このほかには、首都高速の料金改定後の半年後の状況や障害者割引の見直しについて報告されました。

3.高速道路の更新の取り組み等について

各道路会社の現更新事業の進捗状況や先日公表された新たに必要となった更新を踏まえた更新計画について報告されました。

【高速道路老朽化対応で1兆円】NEXCO3社による更新計画が発表されました

新たに必要となる更新は、1兆5000億円と試算されています。

国土幹線道路部会の資料より
国土幹線道路部会の資料より
国土幹線道路部会の資料より
国土幹線道路部会の資料より

4.高速道路の進化の取り組み等について

高速道路の暫定2車線区間の4車線化、高速道路の渋滞状況として3圏域の主なボトルネック箇所、そして先日発表された「高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する検討会の中間とりまとめ」、ダブル連結トラックへの対応、ETC専用化の導入状況が報告されました。

【駐車マス不足だけ?】高速道路SA・PAの課題と対策とは?

5.道路整備特別措置法の改正について

現在開かれている国会で審議予定となっている「道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の一部を改正する法律案」についての報告がありました。

【閣議決定されました】高速道路の料金徴収期限を2065年から2115年へ50年延長する法律案

必要な財源の確保等により、高速道路の適正な管理や機能強化を推進する必要があることが背景となり、以下の大きく3つの内容について法改正として立案したとのこと。

  1.高速道路の料金徴収期間の延長
  2.高速道路料金の確実な徴収
  3.SA・PAの機能高度化

2023年2月10日にこの法律案が閣議決定された際よりも詳しい資料が国土幹線道路部会には提供されていたので、貼っておきます。

国土幹線道路部会の資料より
国土幹線道路部会の資料より
国土幹線道路部会の資料より

委員からの意見

国土交通省道路局からの説明の後に委員との質疑応答となりました。今回は意見をまとめるのではなく、ディスカッション的に意見を出すという形式だったので、私の気になった委員の意見を記載しておきます。

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委員
5年以上前から戦略的な料金体系の導入について議論しているが、アクアラインをダイナミックプライシングの第1号にしてほしい。なぜならアクアラインは国と県が割引をして渋滞していてやりやすいはず。混雑しているところは料金を高くするというのを進めてほしい。
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委員
ダブル連結トラックは物流の効率化の上で大変良いが、いかんせん使いこなせる事業者が多くない。アメリカ、ドイツでは90%以上が20トンのセミトレーラーだが、日本では70%が10トン、12トンとなっている。特車申請の効率化も始まっているから、ダブル連結トラック以外にもセミトレーラーを増やす政策を検討してほしい。
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委員
償還期限の50年延長について、この意図を国民に丁寧にわかりやすく説明する必要がある。個人的にはもう償還主義ではないんだなという印象をもった。償還主義ではない形で説明していく必要があるのではないか?
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委員
SA・PAでは有料化を考える上で、トイレ休憩などもあるので短時間は無料にすべき。またお買い物をしたら長く停められる、環境に優しい車なら長く停められるなどいろんな工夫ができる。SA・PAにはビジネスチャンスがある。道路会社には創意工夫を求めたい。
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委員
事後徴収を確実にする法整備はもちろんOKだが、事後徴収には、10倍の料金を徴収するなど懲罰料金にできないのか?徴収にもコストがかかるので、やったもんがちはおかしい。
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委員
償還期限の延長や法整備などの建付けは今はこれで行くしかないが、なるべく早いうちに、今までのやり方は時代遅れだという考え方を国民に理解してもらえるように、本質を共有していく必要がある。今のやり方ではダメで大転換が必要だという議論が必要だと思う。

今回は、道路局からの報告がメインで、委員からは意見と感想が出たという形で何かを意思決定するものではありませんでしたが、今後、議論の方向性などが見えてくるだろうと思われます。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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